第3話

「生きておられたって……全力で殺しにかかっていた帝国の人間の言葉じゃなくない?それ」

 

 僕は自分のもとにやってきたアルビナ帝国の使者であろう女性にちくりと毒を刺す。


「父上が死んで、今更僕のところに来るのは何故?僕は非公式ながら父上に追放の命を受け、殺意を向けられたんだけど?」

 

 僕は立ち上がり、跪いている女性の視線に合わせる。


「ふっ。今更僕に何か頼むんじゃないよ。たとえ、帝国が陥落しようとも僕には何の関係もないことだ」

  

 様々な感情が走っている女性の表情から視線を外し、マキナたちの方へと視線を戻す。


「帰るよ。マキナ、ミリア」

 

「えっ?あ、うん……」


「承知致しました」

 

 元々僕が第三皇子であると知っていたミリアは特段驚いていないが、初めて知ったマキナの驚きは大きく、未だに驚愕から抜けていないようだった。

 対象的な二人は同じ速度で僕の元にやってきて、僕と歩幅を合わせる。


「……なるほどな。あの一族の人間か。そりゃ強いわな」

 

 酒を口に運び、楽しんでいるガンジスが冒険者ギルドから出て行こうとしている僕に対して口を開く。

 国に関する話題に一切の興味を抱いていないガンジスは既に僕がアルビナ帝国の第三皇子であるということについてさしたる興味もないようだった。

 戦闘狂であるガンジスにとって興味があるのは僕の強さについて。


「まぁね……一応僕も最強の一族の人間だからね。追放されているけど」


「お前さんを追放したあの一族はトチ狂っているんか?俺の知る中じゃあんたが一番強いように思うが」


「僕は元々能無だったんだよ」


「……なるほどなァ」

 

 ガンジスも能無の人間であっても使えるようになるということを知っているのだろう。

 彼は納得したように僕の言葉に頷く。

  

「悪いね。ライントさん。僕は帝国の件に関してはノータッチを貫かせてもらうよ?」

 

 僕は立った状態のまま、呆然としているライントさんに対して口を開く。


「あ、あぁ……」

 

 ライントさんは未だに混乱の抜けきれない表情で僕の言葉に頷く。


「だ、第三皇子殿下はッ!帝国臣民のために多くの行動をなさいました!今ッ!帝国はあの事件の時よりも遥かに混乱の中にいますッ!それらを助け」

 

 冒険者ギルドから出ようと扉へと手をかけた僕に向かって、いつの間にか立ちあがっていた女性が声を張り上げてくる。


「知るかよ」

 

 僕は女性の言葉を遮って簡潔な言葉を吐き捨て、冒険者ギルドから出た。

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