第27話

 普段は兵士として集められた奴隷たちが戦い、競い合い、己の技術を底上げしている訓練場。

 そこで僕とミリアは互いの『神より宿し天命』をぶつけ合っていた。

 いや。


「上、横、縦、下」

  

 僕がミリアの攻撃を防ぐのに武器を使う必要などない。

 その場で体だけを動かし、ミリアの攻撃を回避していく。突きは遅く、袈裟懸けもまた遅く、その場で跳躍すればどんな一撃であっても回避可能。


「……す、すげぇ」

 

「あ、あれでも当たらねぇのかよ」

 

 僕とミリアのやり取りを見ていた周りの兵士として集められた奴隷たちが呆然と声を漏らす。

 

「……ッ!」


「……へぇ」

 

 永遠に避け続ける僕と攻撃し続けるミリア。

 僕は少しずつミリアの太刀筋が代わり、成長していっているのを感じる。


「ヤァッ!」

 

 そして、一皮むける。

 たった一度のフェイントを……完璧なフェイントを放ってきたミリアの槍は僕の体を貫通する。


「へ?」


「ごふっ」

 

 心臓を打ち抜かれ、口か血を溢れ出す僕。


「あぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああ!!!」」


 そんな僕を見てミリアが発狂し、涙を流し始める。


「いや、大丈夫だから」

 

 なんかそんなミリアが怖くなったので、死にそうなふりを辞め、するりと己の体からミリアの槍を抜く。

 本来あるはずのべきからちょっとだけズラしていた心臓の位置を元の場所へと戻し、筋肉を動かして、傷口を塞ぐ。


「……ッ!?アル様!良かった……良かったぁ」

 

 泣いて発狂していたミリアが満面の笑みを浮かべ、僕に抱きついてくる。

 彼女の表情がコロコロ変わりすぎて怖い。反応速度が早すぎる。呆然としている時間短すぎやしません?


「変な悪戯して悪かったよ……それで?そっちの目はちゃんと機能した?」


「はい」


 僕の言葉に一瞬で無表情に戻り、口を開く。

 彼女は既に自分の足で立っている。


「アル様の言う通り……この目は様々なものを見ることが出来るようです。私にははっきりとアル様がどういう行動を取るか、未来を見ることが出来ました」

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