第26話

 少しヌメっている数多の触手。 

 かなりの速さで僕に向かって伸ばされ、肉を削ぎ落とさんと欲す異形の魔物の触手。

 

「……」

 

 僕は床、壁、天井を蹴り、回避しながら銃弾で撃ち落としていく。

 だが、どれほど撃ち落としても全て再生されて何の意味もなかったことにされる。……なんか、点での攻撃でしかない白銃じゃどうしようもない気がしてきた。

 特異弾も効かんし……特異弾の中でも特別な奴なら効く可能性もあるけど、こいつはそれを使うまでの相手ではないだろう。

 

 僕は白銃を右手から左手へと持ち変え、背後に浮遊している刀のうち、小さい方を手元へと移動させる。


「ほんのちょっとだけ本気出してあげるよ」


 僕は天井を蹴り、異形の魔物の方へと突撃をしかける。


「『弐式開放:垓花』」

 

 僕の方へと迫ってくる膨大な触手を細切れにし、その存在を一時的に消してやる。

 再生する前に終わらせる。

 僕は刀を大きな方へと持ち変える。


「死ね」

 

 僕は異形の魔物の頭部と思われる部分へと降り立ち、大きな方の刀を頭から突き刺す。


「縺セ縺?繧。繧。繧。繧。繧。繧。繧「繧「繧「繧「繧「繧「繧「繧「繧「繧「繧「繧「繧「繧「」


 それでもなお異形の魔物は立派な虎の足を動かし、枯れ木のような腕を僕の方へと伸ばし、触手を再生させようとする。

 僕は大刀から手を離し、再び小刀を手に握る。

 再生しかけていた触手は再び絶たれ、枯れ木のような腕も、立派な虎の足も、僕が両断する。

 そこに存在するのは内臓と肉がむき出しの、緑色の液体に濡れている肉塊である。


「『弐式開放:劫焔弾』」

 

 灼熱の業火を持つ弾丸を異形の魔物の頭部と思われるところへと撃ち込み……蛆や蝿を焼き払う。

 何故か異形の魔物には炎が効かないが、蛆や蝿には問題なく機能した。

 蛆や蝿が消滅、見えてきたのは巨大な肉の塊に押しつぶされ……泣いている少女の顔。

 少女の顔は右下に押し込まれ、僕が差し込んだ刀をギリギリのところで回避していた。


「そこか」

 

 この少女の顔がこの魔物のコアだ。

 異形の魔物に流れる力の流れは……この少女の頭から流れていた。

 少女の頭から流れていた少女の力が異形の魔物を再生させ、触手を作り出していた。


「お疲れさん」

 

 僕は一切の躊躇なく、少女の脳天を撃ち抜いた。

 

「莠コ髢薙r窶ヲ窶ヲ菫コ縺ョ螂ウ繧呈ョコ縺励◆莠コ髢薙r縲∬ィア縺輔↑窶ヲ窶ヲ縺??ヲ窶ヲ」


「ふー」

 

 肉塊が震え、不協和音が響き渡り……異形の魔物はその体を塵へと変えた。


「それにしてもなんだった?この魔物は」

 

 塵へと消えた魔物を前に僕は首を傾げた。

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