第15話

 自分の頭が虚無へと支配され、悲痛な叫び声を上げたギルドマスターが落ち着き始めた頃。

 

「……はぁー。なんだあの新人は」 

 

 ようやくギルドマスターがつい先程試験を行った新人について言及する。


「どうでしたか?あの新人は……正直に言って私には何も見えなかったのですが」


「ふっ。安心しろ。俺もだ。この場にいた全員があの少年の動きについていけていないとも。……まるで意味がわからない。なんだ?何があればあれは……?あの瞬間、俺は死を感じたぞ。今まで生きてきた中で最も強烈に」

 

「それほどですか……?」


「それほどだ。あの速度、一撃……あれは全盛期の俺ですら足元に及ばない。全盛期、一度手合わせした遊び半分のSS級冒険者……世界最強の名を冠する女を思い出したくらいだ。それに、俺にはどうもあの少年が本気を出しているようには見えなかった」


「ッ!?ギルドマスターの全盛期を超えてもなおですかッ!?」


「あぁ……実力的にはSS級冒険者の域に達しているのではないか?まぁ、あんな人外共のレベルを図るなど俺には無理だが」


「ず、随分な大物ですね……一体どこから来たのでしょうか?そんなに強い人なら話題にくらい上がっていると思うのですが……」


「さぁな?俺にはちっともわからん。何もわからないと言って良いだろうな。ま、俺らは俺の仕事をするまでだ。規定に従い、評価するだけだ。文句なしの満点。Bランク昇格だな。俺らの仕事は意味わからないやつの身元を特定することでも、監視することでもないからな」


 冒険者ギルトではBランクまで実力のみで上がれる制度となっている。元Sランク冒険者であるギルドマスターの全盛期を超えるアルは文句なしのBランクとなる。


「……あの人ならマキナさんの隣に居ても大丈夫そうですね」


「だな……あいつの隣に立てる人が出来て良かったよ」

 

 他人から避けられ、恐れられ、いつも一人ぼっちだったマキナ。

 そんな少女の隣に立てる存在が現れた。その事実に二人は歓喜したのだった。

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