4 アピールポイント

 バドは最近始めたばかりだという三波さんを加え、みんなで電車ごっこをするように列を作ってやって来たのは職員室だ。

 二葉さんには、既に目星を付けている先生がいるってことなんだけれど、そんなに上手くいくものなのかな?


「いやぁ~先生はバトミントンなんて知らないからなぁ~」


 ほらね。休日がなくなっちゃう部活の顧問になんて、誰もなりたくないんだよ。

 ……というか先生、バミントン、だかんな?


 パソコン画面を見ながら、適当に私たちの相手をする先生に、沸々と怒りが湧き起こる。

 大して作業も進んでいないのに、このくそがとメンチを切っていると、二葉さんが声を潜めて言った。


『さぁみなさん、今こそ魅力を盛大にアピールする時です』


 ええっ? こんなやつに熱意を伝えたって絶対無理だよっ。


 そう思ったけれど、このまま引くのもしゃくだから、バドミントンの魅力を教えてあげることにした。


「せーの」という二葉さんの合図が入って私は口を開く。

 あれ? でもそれじゃあ……。


「一斉に言っても聞き取れなくない? ――って、ちょっとみんなで何をしてるのよ⁉」


 私のツッコミが煩かったのか、先生は「ん? なんだ?」と、こちらに顔を向けた。先生の目が点になる。

 それはそうだろう。だって、この子たち……。


『ほら、あなたも。部のためですよ? 一ノ瀬綾海さん?』


 う。


「わた、私たちとの時間が増えれば、ラッキースケベも……ある、かもよ……?」


 私は泣く泣く、みんなと一緒にセクシーポーズをしたのだった。



「はぁ」

「何ため息ばかり吐いてるのですか。素晴らしかったですよ一ノ瀬綾海さん」


 いやいや、褒められても嬉しくないし。というか私も、なんであんなことをしたんだろう……はぁ。


「そうよ~。私たちなんて腰チラ&腹チラよー? 抱き合ってセーラー服をたくし上げ合うことくらいしか出来なかったのに」


「ねー?」と笑顔を交わし合う二人に、私は十分でしょと思って呆れた。

 私は誰かさんのように、眼鏡をくい上げながら肩紐を見せたり、ましてや誰かさんのように、セーラー服の裾を噛んで下着を平然と見せたりはしなかったけれど、それでもとんでもなく恥ずかしかったんだから!


 そんな調子ではあるものの、無事に顧問を獲得した私たちは、いよいよ最後の砦である生徒会室へ。

 って、まさかここでもラッキースケベ戦法で乗り切るんじゃ……。そう思ったけれど、何やら二葉さんに考えがあるらしい。私たち4人は、大人しくだんまりを貫いていればいいとのことだ。


「同好会設立願を持ってまいりました」

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