ロアと炎狐の魔剣士

甘烈なかぐろ

prologue



 軌暦きれき五千三十二年、今から約八百年前に、百年戦争が開幕された。


 火蓋を切ったのは、エレノアだった。領地奪還のため、隣国のノクトールへ宣戦布告をしたのだ。幾度かの休戦を挟みながら、その名の通り百年余り続いた戦争は、エレノア、ノクトール含む四大国によって、世界に多くの犠牲を出していく。結果、エレノアの勝利によって幕を下ろすが、戦火の代償は大きかった。四つの魔神が生まれ、再び世界に暗雲をもたらしたのだ。


 一つは、氷の魔神・忌霊いれいエリシス。その体が纏うのは氷の霊気。近付くものを全て凍らせ、人々から温もりを奪った。


 一つは、水の魔神・醜魚しゅうぎょシロカ。彼女がひとたび泳げば、水は毒に変わる。毒の水を降らせ、人々から自由を奪った。


 一つは、炎の魔神・煌獣こうじゅうフォーヴァント。大きな翼で空を舞い、鋼鉄をも溶かす灼熱の息吹を地上に落とし、多くの生命を奪った。


 そして、闇の魔神・霞龍おぼろりゅうツキハクラ。世界を闇へ導き、人々から光を奪った。


 魔神を恐れた人々は、残された力を使って魔神を異界へ追い込んだ。そして、魔力の根源を用いて扉に鍵をかけ、封印を施した。その鍵の管理者は、体内の魔力核に鍵を埋め込み、異界の扉の封印を守る。


 それが、現代に繋がる重要な歴史の大略だ。

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