世界の十字路14~春の雨降りし時~

時雨青葉

プロローグ

未曽有の危機



 春の雨が地を潤す時、地に眠りし邪念がよみがえる―――





「まずいな。これでもう、何人目だろう……」



 突然倒れた一人をベッドに横たえ、彼は深い溜め息をつく。



「どうしよう、このままじゃ、儀式に必要な魔力が足りなくなっちゃう……」



 隣では、華奢きゃしゃな少女が不安げに眉を下げていた。



 彼女の懸念も頷ける。

 こうなってしまっては、もうこの子が儀式に出ることは不可能。



 ただでさえこの儀式に参加できる者は限られているというのに、このままの調子で倒れる者が続出すれば、いつ儀式に必要な魔力が枯渇してしまうことか。



 この儀式は二年に一度の大事な祭典。

 当然ながら、失敗は許されない。



 事態は深刻だ。



「仕方ない。緊急助っ人を要請できないか、城に交渉してみよう。」



 もう、これしか方法はあるまい。

 城の方でも倒れる者が何人も出ていると聞くし、こちらの言い分が却下されることはないはずだ。



「大丈夫。なんとかするよ。」



 震える少女の肩を叩き、彼は頼りなげながらも優しい微笑みを浮かべた。


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