八話 【失念、鑑定スキル!】

魔導書店は所狭しと本棚が並ぶ本屋をイメージしていたが、こじんまりとしたカウンターがあるだけの小さい店だった。


店員は魔女を想像してたが、普通のおっさんがエプロン姿で愛想良く迎えてくれた。


「いらっしゃい、どんな魔導書をお探しで!」


ベンゾウは興味がないのか、すでに飽きている。


「えっと、生活魔法を探してまして」


「お客さん、運が良いね〜 新作の良いのが入ってるよ!」


男は裏に消えると、1冊の本を持って帰ってきた。


「値は張るが今までの常識を覆す、最新式のクリーンの魔法だ」


聞くとこの最新式のクリーン魔法、消費魔力を少なくし、範囲も広いとの事で、まさに欲しいがここにあった。


「でも〜 お高いんでしょ?」


「こいつは偶然出来た一点もんでね〜 300! いや250ギーでどうだい?」


たかっ! ベンゾウより高っ! 


いや魔導書の相場知らんけど、失敗したら消えるだけの本でしょ!


250万って、そりゃないぜ、とっつぁ〜ん! アゴも割れるわっ!



「「 あははは〜 」」


おっさん二人の笑い声だけが店内に響いてた。




「良いかいお客さん! このクリーンは日に何度も使えるし、おまけに範囲は人一人分もあるんだぜ!」


マジ! ほしい……


これがあれば風呂入らず! 


いや、湯船には浸かりたいが、こっち来てからシャンプーはないし髪はゴワゴワでオイリッシュ! 


歯磨きは枝が刺さって、歯磨きの後の歯磨きがしたいぐらい! 


全身清潔になるには、これしか無いか……


そもそも俺に使えるのか? 


ベンゾウは適性無いらしいし……


「ん〜」


「よし、わかったお客さん! 持ってけ泥棒、200でどうだ!」


「ご主人様、ドロボー、違う!」


うん、ありがと、ベンゾウは黙ってようね!



大きな賭けだが、どうする惣一郎……








近所の食堂で食事を済ませ、宿に帰るふたり。


惣一郎の手には一冊の本があった。


確率を少しでも上げてから試したい!


魔導書の適性がわかる物があれば良いんだが、ほんと運らしいし……


ちなみに他の魔導書の相場も聞いたが、10〜30ギーと魔法によって開きもあるようで、それでも高額な博打だ。


属性で適性があるとかステータスでも見れればなぁ……


転生条件に[鑑定スキル]を失念してた事が悔やまれる!


魔導書店の店員も、鑑定スキルなんて聞いた事も無いと言っていたし、この世界には存在しないのだろうか?


まっ、あったとしても、さらに高額な博打になるだけか……


そう言えば、そもそもこの本をどうするんだ?


読めば良いのか? 


大事な事を聞くの忘れてたな。


「ベンゾウさんやぁ〜 コレでどうやって覚えるんだ?」


あげたお菓子を食べてたベンゾウが「こうするの!」っと俺の頭に本を乗せ、何かを唱えた!


「ちょおおおおおおお、まて!!」


頭の上で青い炎が本を包むと、本は消え頭の中に[クリーン]の言葉が刻まれるのを感じた。


あれ、成功したのか?


「クリーン」


さっぱりした。






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