幼馴染美少女の愛玩になりまして。

るぅるぅです。

1.ぬいぐるみと濃いめの告白

気が付いたら俺は機械に繋がれている「俺の身体」を見ていた。


一瞬でぐわっと頭の中に出来事が駆け巡る。

そう、俺は高校から塾に向かって自転車を走らせている時にワイヤレスイヤホンで音楽を聴いていたのか配信を聴いていたのか、とにかく反対側から走ってきた自転車が思い切り突っ込んで来て路肩に脱輪し日に熱されてアツアツのコンクリが目の前に飛び込んで来たのだ…


(まさか。まさかな…あの後気絶して夢を見てるのかもしれない)


ポジティブに考える。と、いうか…

現実味が無い。

痛みや運ばれた記憶も無く、いきなり目の前に自分がいるというだけの状況。俺、終了ですかそうですかと納得できるものではない。

とにかく…観察だ。


俺は頭になかなかの怪我をして包帯を巻かれてベッドに横たわっているようだった。

痛みの記憶が無くて良かったのか悪かったのか、現実感が無いのに危険な現実を突きつけられてる状態だ。


「なんじゃこりゃ」としばらくぼーっとして周りの光景はなかなか受け入れられなかった。


繰り返すが、自分が目の前にいるなんて相当なナルシストじゃないと「俺だ、すげー」なんて気分にはならない。そこまで能天気でもない。しかも病院のベッドで怪我をして横になっていたら尚更だ。


じっくり観察して、少しずつ受け入れようとしたが…だめだ、信じられない。

そしていつまで経っても目が覚めない…

長い夢だ。

これはきっと長い夢だと思うことにした。


なら夢の中で俺を助けようじゃないか。そうでもしないと気が狂いそうだ。


いくらか冷静になって、俺は観察を再開した。

大きな手掛かりの一つはプレートや点滴に書いてある名前だ。

三浦 耀太ようた 301

そして見える範囲のすぐそばに自分の横顔があり、右目部分にあるセクシー効果は特に発揮出来ていない泣きボクロ。とどめは誕生日に買って貰ったスマートウォッチが枕元に置いてある。スマートウォッチ…お前、俺がこんな状態になっても無事だったのか、すごいな。そのラッキーさ羨ましい。

ま、夢だから夢ジョークってやつだろう。


布団から覗いてる手足は絆創膏程度で済んでいるようだった。

事故の全負担が頭にいったのは果たして大丈夫なんだろうか。ピ、ピッと心臓か脳神経か、俺の生きてる電子音らしきものは聞こえるのでそれを信じることとする。


元々冴えないぼーっとした顔は無事で、なんの感情も持たないまま目を閉じて横になってる自分を見ていたら死んでしまうんじゃないかと焦り、今ようやく動こうと思えるようになってきた。


それにしても中途半端な場所にある今の俺の視点。

目の前にいるのが俺の身体ならこの身体はなんなんだ。

妙にふわっと軽く動く…何とも力を入れにくい状態だった。


真っ先に思い浮かんだのは幽体離脱である。

そうか。

贅沢な夢だ、なかなか無い状況だぞ。

俺はここから自分の身体に戻って目が覚めるという珍しい体験を夢で、現実では無傷で行えるのだ。現実で打撲と脳震盪くらいはあるかもしれないが、まあ深く考えないことにしよう。


幽体離脱は上から自分を見下ろすと聞いている。

今は横から…若干下からでもある。

レアなアングルにあたったもんだな、とにかく戻らないといけない。

……よいしょ…

ん?…身体はやけにもっさり感がある。

動きにくい。そのくせ、腕を振ったら全身が揺れる。何か身体があって、軽いけれど繋がれてるような…何かから離れられないような。


とにかく俺の身体の元へ行く為に動こうと腕をばたつかせてると、聞き覚えのある可愛くてよく通る声がした。


「耀太のばか!今日塾が終わったら話があるって言ったじゃない…!待ってたのに、こんなのひどいよ!」


ツインテールの艶やかな黒髪。

胸元に大きなリボンのついたセーラー服の色を濃紺にしてチェック柄のミニスカートを組み合わせためちゃくちゃ可愛い制服。

俺の高校の女子じゃないかと顔を見ると、めちゃくちゃ見覚えのある相手だった。


見間違いか?

なんか大きく見えるしな。

俺の今の目?は万全じゃなく視界が歪んでるのかもしれない。


その子はベッドに寝てる俺の手をきゅっと握って

「早く起きなさいよ」

そう涙声で言ってるのは…胸も大きくて顔も可愛くて太もものニーハイ絶対領域がたまら…あ、なんでもないです。そこは大事だが今は置いといて。

とにかく俺のお隣さんで幼馴染、美少女・宇郷うごう初凪はつなだったのだ。


…何度見ても間違いない。


家族ではなく、初凪がいるとはどういう事だ?

留守番でも任されたのか…?


幼馴染といえばロマンがあるかもしれないが、実際は同い年なのに姉貴風を吹かせるツンツンツンツンデレの面倒な奴。

常に何がしたいのかわからんので、俺はいつも怒られてばかりいる。正直何に怒られているのかも全然わからないので最近は塾も始め忙しいからと逃げ回っていた。


しかしあれか、一応心配してきてくれたんだろう。なんだかんだで優しいんだよな。

ちょっとほっこりする。

…ああ、これは夢だったな。俺の欲望が出てきたのか、それはなかなかに恥ずかしいぞ…


夢の中の可愛い初凪の為にももう一度トライだ、とまたもっさり身体を動かす。

ダメだ、ブオンとなるだけだ。


「?今、何か…気のせいかな」


!!気のせいじゃないぞ、初凪ー。

だが気のせいと判断されたらしく、また彼女は俺の身体に話し出した。


「今日告白と一緒に記入済みの婚姻届を渡すつもりだったんだから、早く起きてありがたく受け取りなさいよねっ!パパとママにはもう許可を取ったから」


ん?

え?


「同じ大学にはもちろん行くけど、耀太は綺麗なお姉さん絶対ついてくから結婚指輪させないと!家賃も一緒に住んだら節約なるしねっ。私がちゃんと考えてるって、早く話さなきゃ。子供もたくさん欲しいし…キャッ」


………?

ん?


あー、えーと。

あ、うん。

キャッ?


……ギャアアアア!


怖っ!!なんだ今の束縛宣言!

俺の身体逃げろ、狙われてるぞ!

夢の中だけに何でもありかもしれん!くそっ、シュコーシュコー言ってるだけで微塵も反応しない。俺は俺に無力なのか…っ!!


とにかく初凪を止めよう。

ギャグにしても夢にしても怖すぎる!

あと出来たら色々するのは俺の身体に意識ある状態で!!


じたばたしていて疲れ、ぜーぜーしていたら「今日はもう帰るね。ミニ耀太、行こう」という声が近くで聞こえて柔らかく温かい初凪の手が迫ってきた。


え。

でか!!

びっくりして固まっていると、指先で頭を撫でられてチュッと頬っぽい場所にキスをされた。


?!


ぐわっと視界が動き、ぐおんぐおんと揺られながら俺はぎりぎり鏡に写ってる自分を見た。


俺は、初凪の鞄についてるぬいぐるみになっていた…

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