第104話 出撃準備
「ユータ、何があったの!」
「ユウタ様、これは?」
最後の魔獣を仕留めたアリエッタとユリーナが、俺の側に駆けつける。
「ちょ、ちょっとユウタくん! なんかドラゴンがいるんだけど!?」
「いったい何が……?」
「わー、つよそー!(^^♪」
「こんな状況なのに、お姉さまは本当に楽しそうですね」
わずかに遅れてルナ、リューネ、キララ、クララも勢ぞろいした。
よかった、見た感じ誰も怪我はしていないようだ。
「あれはジラント――首謀者の姫騎士の成れの果てだ。どうやら自らの命を生贄に魔竜を召喚したらしい。言うなればジラント・ドラゴンだな」
「そんな……自分を犠牲にするなんて……この世界に不満があったからって、そこまでしなくていいじゃない」
アリエッタが呆然とつぶやいて、
「そうまでして、叶えたい理想があったのでしょうね。わたくしには到底理解できませんが」
ユリーナが小さく肩をすくめた。
「ジラントにとってはそれほど真剣な想いだったんだろうな。俺にも理解はできないけどさ」
「ちょ、ちょっとみんな! そんなこと悠長に語ってないで、アレをどうにかしないとまずいよ? アタシたち、なんか閉じ込められちゃったみたいだし」
ルナが焦ったようにドラゴンを見た後、空にあるドーム状の闇色の覆いに視線を向ける。
「やっぱりこれって中と外を断絶する結界だよなぁ」
「あのねあのね! さっきキララ、結界をキラキラ☆パンチしてみたんだけどね。メチャクチャ硬かったの。傷一つつかないし、手がすっごく痛くなっちゃった(;'ω'∩)」
「パワー自慢のキララの攻撃でも跳ね返されるか。手は大丈夫か?」
「うん、もう治ったよ!(*'▽')」
キララがにぱーと笑う。
その場違いすぎる明るさに、俺は少し落ち着けた気がした。
「見事に閉じ込められたみたいだな。第3王女は結界の外なのか?」
「第3王女や民衆の避難は完了しています。結界の中に取り残されたのは、ここにいる私たちだけです」
リューネの言葉に俺はひとまず安心する。
いやドラゴンと一緒に閉じ込められたんで、全然ちっとも安心はできないんだけど、それでもここにいる信頼できる仲間たちとなら、俺はなんとかなる気がしていた。
「ってことは、これからジラント・ドラゴンと戦わないいけないってことね?」
「そうなるな」
真剣な口調で言ったアリエッタに、大きく俺はうなずいた。
これから始まるのはドラゴン討伐戦だ。
「あら、ローゼンベルクの姫騎士ともあろう者が、臆しましたの? だったらここはわたくしたちに任せて、どうぞ後ろに下がって隠れていなさいな」
「そんなんじゃないわよ。最強種といわれるドラゴンを警戒しているだけ。そういうユリーナこそ、余裕ぶってるけどさっきからずっと表情が硬いわよ? もっと肩の力を抜きなさい。そんなんじゃ、いつもの力が発揮できないわよ」
「ふん、余計なお世話ですわ」
アリエッタとユリーナのいつものやり取りも、しかしいつもと違って少し張りがない。
『後ろに下がって』とか『いつもの力が発揮できない』とか、なんとなくお互いに心配しあっているような様子だ。
やはりドラゴンが相手ともなると、2人とも根っこにある優しさを隠しきれないんだろう。
「この結界って、多分ジラント・ドラゴンを倒さないと消えないよな」
「発生のタイミングも同じですし、おそらく連動していると思います。なので外からの増援は期待できなさそうですね」
学者の家系で、こういうことに一番詳しそうなリューネが言うんだから、それで間違いないだろう。
「俺たちでやるしかないってわけだ」
俺が全員に視線を向けると──ワクワク感いっぱいのキララだけは笑顔だったが──全員が神妙な顔で頷いた。
「ユータ、フォーメーションはどうするの?」
「俺、アリエッタ、キララで前衛を組む」
「了解」
「はーい(=゚ω゚)ノ」
「ユリーナは後衛から援護射撃と防御を。ギリギリの戦いになる、1人だと負担は大きいだろうがなんとか頼む」
「後ろはどうぞお任せ下さい。ユウタ様の期待に応えてみせますわ」
「ルナは遊撃を頼む。臨機応変に動いて、俺たち有利の状況を作り続けて欲しい」
「オッケー」
「リューネは後ろにいて、回復担当だ。ドラゴン相手だと全員、高威力魔法の連発になる。勝つためにはリューネの魔力回復が必須だ。上手くローテを組みながら回復を回して欲しい」
「心得ました」
「クララはリューネのサポートをしつつ戦況の把握を。回復ローテの指示は任せた。ただし絶対に前に出ないでくれな。守りきれない可能性がある」
「承知しました」
これで準備は整った!
「じゃあ行くぞ、みんな! ドラゴン討伐戦だ! 逃げ道はない。やってやろうぜ!」
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