第93話 俺はお祭りで偶然、ユリーナに遭遇した。

 4人でブレイビア祭を見回っていると、ついにメインイベントである仮装パレードが始まる。


「わっ、わっ、見て見て! すごく凝った衣装よ!」


 低速で引かれた人力台車の上で、紅白の小林幸子も顔負けの絢爛けんらんで豪華でゴージャスな、すそが何メートルもある巨大ドレスを身にまとった御仁を、アリエッタが興奮気味に指差した。


「これはすごいな。明らかに他の人とは違ってる」

 もうキンキンギラギラ。

 ここだけ世界が違ってる。


「この日のために仕上げてきたって感じだよね!」

「今日の仮装パレードのためだけに人生賭けてる感じだよな」

「すごくお金がかかってそうだ」

「どこから資金を出してるのかな?」


 もちろん盛り上がっているのは俺とアリエッタだけではない。

 ルナも楽しそうに会話に参加してくる。


「あの人って、たしか有名な人のはずだよ」

「そうなのか?」


「えーと、なんだったかな。健康食品かなにかで財を成した豪商の親戚らしくて、年々衣装が派手になっているの。お店の宣伝も兼ねてるんだって」


「たしかにあれなら話題にもなるよな。話題にせざるを得ないっていうか」

「さすがに今年の衣装は、次元が違うレベルで気合が入っているみたいだけどね」


 説明してくれたルナも若干、苦笑気味だ。


「本人も楽しくて、お客さんも楽しくて、お店の宣伝にもなるなんて、理想的な状況ですよね」


 そして話をいい感じにまとめてくれたリューネの声も、明らかにそうと分かるくらいに弾んでいた。


「誰も損をしないもんな」

「強いて言うなら他の仮装パレードの参加者とか? 割を食っちゃうもん」

「あれはもう別格だから、大丈夫じゃないか? 一種の殿堂入りだろ?」

「あはは、言えてる」


 俺たち4人が足を止めて、ド派手な仮装パレードに見入っていると、


「あら、そこにおられますのはユウタ様ではありませんか。このようなところで出会うなんて、奇遇ですわね」


 背後から最近毎日のように聞いている、聞き慣れた声が聞こえてきた。

 振り向くとそこには予想通りユリーナと、キララとクララのメイド姫騎士の姉妹がいた。


「よっ、ユリーナ。それとキララとクララも。今日は3人もお祭りを見に来たのか?」

「ええまぁ、そのようなところですわね」


「ま、年に一度の盛大なお祭りだもんな。みんな見に来るよなぁ」

「ユウタ様も楽しそうですわね」

「おうよ。今もみんなで、あの派手派手衣装の話題で盛り上がっていたところだ」


「ふむ……ユウタ様はああいった派手な衣装がお好みなのですか?」

「好みっていうか、すごいよなって。見ていて楽しいし」


「でしたら来年はわたくしも、あれが霞むほどのゴージャスな仮装をしてみましょうかしら?」

「いいんじゃないか? ユリーナは何を着ても似合いそうだし」


「ふふっ、ユウタ様は口がお上手ですわね」

「本心だっての。特にユリーナは高貴なお嬢さまって感じだから、ゴージャスな衣装で着飾ったらえるだろうし」


 などと、俺とユリーナがちょっとした出会いのやり取りをしていると。


「なんでユリーナがここにいるのよ」

 アリエッタがややツンケンした口調で、会話に割って入ってきた。



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