第90話 仲のいいお話(?)をするアリエッタとルナ

「なぁ、さっきから2人はなんの話をしているんだ? まったくついていけてないんだが。俺の名前が出たし、俺に関することなのか? なにか揉めているみたいだけど」


「揉めてなんかいないよ? ここからはアタシとリューネも一緒に、4人でお祭りを見て回ろうって、すごく仲のいいお話をしてたんだし♪」

 ルナが満面の笑みでにっこりと笑う。


「そんな話にはまったく聞こえなかったんだが……」


「ね、アリエッタ♪ そうだよね♪」

「う、うん……そう……」

「ほら」


 どうやら本当にそういうことだったようだ。


「なんだ、心配して損した。俺の取り越し苦労か」

「あ、心配してくれたんだ?」

「少しな」


「えへっ、ありがと♪ ユウタくんは優しいよね♪ そういうところいいと思うな♪」

 またもやルナが満面の笑みでにっこりと笑った。


「しかし女の子の会話ってのは難しいな。とても理解できる気がしないよ」

「あははは……」


 しみじみとつぶやいた俺に、どっちに味方するでもなく静かに会話を見守っていたリューネが苦笑を浮かべた。


 ということで。

 なんだかよく分からないうちに、ルナとリューネがお祭り仲間に加わることになった。


 ま、これはこれで楽しそうだからいいんだけども。

 アリエッタと2人きりの推しの子デートじゃなくなったことだけは残念だけど、ルナとリューネもとても可愛くて美人だ。

 明るくて楽しいし、一緒になって嫌な気分になるはずなんてない。


「じゃあ行くか」

「はーい♪」

 4人パーティとなって歩き始めてすぐに、ルナが俺の右腕を抱き抱えるようにして密着してきた。


 むにゅり。


 柔らかい乙女の感触が俺の腕を挟む。

 挟んだのである。

 つまりはそういうことだった。


 俺を優しく挟み込んでくるアレに、意識が強烈に引っ張られる。


 アリエッタ推しを自負する俺も、一人の男の子。

 女の子の魅惑の感触には、どうにも抗することができないのである。


 でもさ?

 俺は女の子と付き合うどころか、ろくにスキンシップもしたことがなかったから、これはもうしょうがないことだと思うんだ!

 急にモテ期が来たら、みんな絶対こうなるから!


 ま、これが本当のモテ期かどうかの判断も、俺的にはできないんだけれども。

 なにせそんな経験がないからな!


 アリエッタが心を開いてくれていることは、アリエッタ推しの俺にはある程度分かるんだけど、ルナとか、ただからかっているだけの可能性があるもんな。


 時々いるだろ? 男子と距離感が近い女の子。

『〇〇くんってー、筋肉凄くなーい? ねーねー、ちょっと触っていいー?』とか言ってペタペタとスキンシップしてきたりするんだ。


 もちろん俺にはそういう経験は一度もないんだけど、教室でソシャゲを周回中にそういうやりとりをしているカースト上位グループを見かけることがあった。


 でもそこで勘違いすると、イタイ男子になっちゃうんだよなぁ。


「ちょっとルナ、離れなさいよ」

 と、そこでアリエッタが剣呑な口調で言いながらルナを睨んだ。


「なんでそんなことアリエッタに言われないといけないの? アタシがユウタくんとくっついていても、アリエッタに関係なくない?」

 負けじとルナも言い返す。


 俺を間に挟んで再びアリエッタとルナが、仲のいいお話――俺にはそうは見えないんだが本人たちが言っているんだからそうなんだろう――を始めた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る