第61話 狂乱するキララ

「あーもう、くそ! 話くらい聞けっての!」


 神龍剣レクイエムを失った俺は、徒手空拳でキララに対応するが、さすがに魔法なしで今のキララと殴り合いするのは分が悪かった。


「へっへーん、魔法が使えなきゃ私の方が強いよねー! この勝負もらったぁ♪」

 ここが勝負どころとばかりに、キララの攻撃が鋭く激しくなっていく。


「ぐぬっ!」

 LV99神騎士とはいえ、近接デストロイヤー相手に魔法無しで戦うのは、かなり厳しい。


「そらそらそらぁっ!」


 破壊力抜群の攻撃はパンチ一発ですら、ガードの上からゴソッと防御加護を削ってゆく。

 それほどの異常な攻撃力だ。


 開幕で1発直撃アッパーをもらったのが地味に効いているな。

 あれがなけりゃ、まだなんとか耐えられただろうに。


 俺はキララの攻撃をガードせずに、徹底してさばきにかかった。

 いわゆるパリィで、時間を稼ぎにいく。

 なにせヤサカニの勾玉の効果は、かなり短いらしいからな。

 わざわざ教えてくれる悪役ムーブをありがとさん!

 悪いがここは、待ちに徹せさせてもらうぞ!


「キラキラキラキラッ!」

 パリィパリィパリィパリィ!


「キラキラキラキラッ! キラキラキラキラッ!!」

 パリィパリィパリィパリィ! パリィパリィパリィパリィ!


「キラキラキラキラッ! このぉっ! キララン☆レボリューション!」

 パリィパリィパリィパリィ! パリィパリィパリィパリィパリィパリィパリィパリィ!!


「むむっ! 当たらないし! 当たらない当たらない当たらないし! なんで!? ムカつく!」


「俺は強いって言っただろ? しかも学年主席のアリエッタと毎日模擬戦をやってるんだ。世界に1人の男の姫騎士を、あんまり舐めんなよ!」


「むぅぅぅぅ!!! そんなのキララどーでもいいし! 怒りの精霊フラストレ! もっとパワーちょうだい!! もっと! もっと!!」


 キララが呼びかけると同時に、瞳を染めていた暗い紫色がどんどんと濃くなってゆく。

 それと同時にキララのスピードがさらに増し、攻撃力が増大した!


「おいおい、まだ強くなるのかよ!?」

 さらに苛烈になったキララの猛攻を、しかし俺は全力パリィでしのぐ!


「キララララララッ!」

 パリィパリィパリィパリィ!


「キララララララララララララララッ!」

 パリィパリィパリィパリィパリィパリィパリィパリィ!


「ぐ、ぐぅ、キララ負けない……! ぐぎっ、キララ負けないんだから!! もっと、もっと力をちょうだい! もっとっ!!!!! URYIAAAAAA――ッ!」


 な、なんだ?

 キララの様子が……?


「っ! キララ! それ以上はおやめなさい! それ以上コンタクトを深めると、怒りの精霊フラストレが暴走いたしますわ!」

 ユリーナの焦ったような声が飛んでくる。


「キララ負けないもん! キララ勝つんだもん! キララはっ! キララHAAAAAヒャハハハッ!!」


 絶叫するキララから、身の毛のよだつような、どす黒い紫色のオーラが立ち上がり始めた!


「い、ひひ……キララ、マケない……マケナイ…………いひっ、やったぁ! やぁっと出てこれタ! おまえラ全員、殺ス……死刑……死刑死刑オールキリング皆殺シ! ケヒヒヒッ! 死ねェっ!」


 ちょっとアホっぽかったキララの口調は、いまや完全に別物になっていた。


「なんかヤバいことになってないか? 明らかに同化した精霊が暴走してるよな? 怒りの精霊フラストレに身体を乗っ取られてるよな? ちょっと、レベッカ先生!?」


 審判役のレベッカ先生に視線を向けるが、止める素振りは全く見えない。

 むしろ興味深げにキララの様子を見つめている。

 これくらいのアクシデントなら続行しろってか。

 さすがはブレイビア学園、とことん容赦がない。


「ヒヒッ! まずは散々イラつかせてくれたムカつく男、お前DA! イヒッ! 殺ス殺ス殺ス殺ス死刑死刑死刑死刑死ネ死ネ死ネ死ネぇッ!」


 殺意に満ちた暴走キララが、飛びかかってくる!

 俺は暴力の塊のような攻撃をさばきながら、覚悟を決めた。


「ああもぅ。こうなったらしゃーないな。ここで負けるわけにはいかないし、こいつを放っておくわけにもいかない。俺もちょっと本気を出すとするか!」

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