第6話「精霊と契約して騎士になれるのは、女性だけ――それがこの世界の理だ。でも俺だけは例外なのさ」
「それは確かに悪いことだけど……でもアリエッタも、本当は殺そうなんて思ってないでしょ? 私、アリエッタがそんな酷いことはできない優しい女の子だって、知ってるもん」
「う、うるさいうるさいうるさい! もういいでしょ! さっさと決闘を始めるわよ! 話していたらいつまで経っても始まらないわ」
うがーっ!
っと、顔を真っ赤にして吠えたてた後、
シュピン!
怒りをぶつけるかのように、アリエッタが俺にレイピアの切っ先を向けた。
「その意見には同意だな。とっとと始めよう」
「あんたと同意見なのは
「言ってろ――ってわけで。
俺がその名を呼ぶと、俺の身体に黄金の鎧が装着され、同時に俺の手に闇を携えたような漆黒の刃を持った大振りな剣――バスターソードが顕現した。
「ちょ、なっ!? ええええっ!? どうして男が
アリエッタの目が大きく見開かれ、その顔が驚愕に染まる。
だがそれも当然と言えば当然だ。
「精霊と契約して姫騎士になれるのは、女性だけ――それがこの世界の絶対のルールだ。でも俺だけは例外なのさ」
ソシャゲ『ゴッド・オブ・ブレイビア』の世界では、女性だけと絆を結ぶ『精霊』と契約することで、姫騎士になることができる。
しかし記憶をなくしたユーザープレイヤーだけは、なぜか男性なのに精霊と契約ができるのだ。
そして世界で1人しかいない男の姫騎士となって、王立ブレイビア学園に入学するという設定だ。
(ちなみに男なのに姫騎士なのはおかしくね? とオープンβから散々ツッコまれているのだが、運営は仕様ですという回答を繰り返している)
そういう世界観ってのもあって、俺が男の姫騎士であることに、アリエッタはこれほどまでに驚いたのだ。
「ふ、ふーんだ! 男の姫騎士だから何だっていうの? ちょっと珍しいだけの珍獣じゃない!」
「珍獣って、おい……」
俺はツチノコかい。
「たかが珍獣が、このアリエッタ・ローゼンベルクを馬鹿にしないことね! 我が盟約を結びし偉大なる炎の精霊サラマンダーよ、我に力を!」
アリエッタのレイピアが紅蓮の炎をまとう。
それを見て、ここまでなんとか仲裁できないかな、みたいな態度を取っていたリューネが、もうこれは仲裁は無理だと、慌てたように距離を取った。
さてと、口ではいろいろといったが、平和な日本で、しかも目立たないように日陰で生きてきた俺の人生で、初めての実戦だ。
俺は取り立てて運動神経がいいわけでもないし、どうするかな。
とりあえず、まずは相手の分析をしておくか。
アリエッタが使う炎魔法の特徴は、なにせ攻撃力が高いこと。
ゆえに炎魔法を使う姫騎士は、強大な魔獣を倒すには欠かせない存在だ。
そして姫騎士同士の戦いにおいては――姫騎士は皆、契約精霊の防御加護をまとって戦うが――炎魔法はその防御加護を、無理やり破壊するのが大の得意なのだ。
さらに
しかし攻撃力が高い反面、トリッキーな攻撃方法は少なく、攻撃が読まれやすいのが欠点だ。
俺は初めての実戦を前に、ソシャゲの知識を元にいろいろと状況を整理して分析をしながら。
対するアリエッタはおそらく、初めて戦う男の姫騎士である俺を警戒して。
お互いに出方を
「ふん! 精霊と契約できるからなんだっていうの! 喰らいなさい、フレイム・アロー!」
先に動いたのはアリエッタの方だった。
ま、アリエッタの情熱的(思い込みが激しいとも言う)な性格からして、自分から吹っ掛けた決闘で、受けに回ることはありえないよな。
アリエッタの眼前に現れた数十本の炎の矢が、高速飛翔して俺を襲ってきた――!
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