第3話 伝説のスナイパー
「これから射撃訓練を行う。軍人は、たとえ疲労していても遠くの標的に正確に射撃ができなければならない。民間人や、仲間の命を守るために必須の技術だ。」
「1名誰か代表してやってもらおう。誰かやりたい者はいないか?」
訓練生たちは皆顔を見合わせた。名乗り出る者はいない。
鬼のロキ教官の前で1発も当たらなかったら・・・どんなペナルティーが科されるか考えただけで、手を挙げることが出来なかったのだ。
「誰もいないのか。ではリコ・バルト、やってみろ。」
「自分ですか?」
「お前以外にリコはいたか?さっさと出てこい。」
学生たちからクスクスと笑いが起こる。
リコは決して体力があるほうとは言えず、訓練中のミスも多いので、一部の学生達からバカにされたような言動を受けることがあった。
リコはさっきの腕立て伏せのせいで、銃を持つ腕に力が入らないし、頭もクラクラしている。
震える手で必死で照準を合わせ、何とか数発発砲した。
「すごい。全部的に当たってる。」
学生たちが歓声をあげた。
リコが撃った弾丸は、50メートル離れた的にすべて的中し、どうだと言わんばかりに拳を握ってみせた。
「これくらい出来てもらわなければ困る。」
ロキ教官は表情を変えずに言った。
訓練後、リコは教官室に来ていた。ロキ教官から放送で呼ばれたからだ。
「失礼します。訓練生リコ・バルトはロキ教官に要件があって参りました。」
「リコ、お前は今日の訓練で何発的に当てたか覚えているか?」
「全部で10発です。」
リコは少し得意げに答えた。
「そうか。ならここで当てた分だけ腕立て伏せをやってもらおう。」
「え?」
「1発につき100回、腕立て伏せ1000回だ。」
なぜペナルティーをやらなければいけないんだ。理不尽にも程がある。
「いいか。今日お前が当てた10発の弾丸は、10人の命を奪うことができる。人の命は何よりも重い。その重さを、お前はまだ何も分かっていない。」
「俺たちの銃は、ケルトの人々、俺たちの家族、子供達を守るためにある。射撃は遊びではない。そのことを決して忘れるな。」
リコは内心今日の射撃訓練の出来を褒めてもらえるのだと、淡い期待をしていたが、
自分のちっぽけな考えが恥ずかしくなった。
あと500回・・・頭がクラクラしてきた。
「リコ、リコ、ねぇ聞いてる?」
誰かが呼ぶ声が聞こえる。
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