ジャンケン
鯖人 サバト
第1話 やるせない日々
私は死神というモノを知っている。無論それはヒトでは無い。だが、この現代に実体として存在している。そして、誰でもなれてしまう。恐ろしい。私もなってしまうのかも知れない。
3ヶ月前。私はそんな事を知る由も、考える余地すらなかった。俗世に言うしっかりとした社会人を演じながら抜け殻の様に生きていた。
平々凡々。
四字熟語にするならそんなところか。いつもと同じ電車に乗り、いつもと同じ駅前を歩き出勤する。気づけば毎日同じ時間の同じ風景しか見ていなかった。
何も変わらない日々。
ふと立ち返ると己の空っぽさを感じるようになった。社会に解き放たれたばかりの頃は所謂尖っていて、自分が信じる正義を心で掲げ、思い通りにいかない物事への憤りや己の無力さを悔やんだりして、それでもひたむきに生きていた。今思えばまだあの頃は心に彩りがあったのかも知れない。
だが今はその色すら無くなってしまった。
社会に適応するとはこういう事なのか、あの頃は右も左も分からないが故に暴れていただけだったのか。それにしてもつまらない。
次第に、いつもと違うモノを探しながら歩く様になった。まるで自分が機械の様に思えたのが堪らなかったのだ。
ふといつもの場所に居城を構えているホームレス達に目をやる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます