第5話 城下町からスキル説明

 ただただ長ーい夢を見ているような高揚感。

 私の胸は掻き立てられる。


 明輝ことアキラは、気が付けば知らない城下町の広場にいた。

 目の前では噴水の水が今まさに噴出する瞬間だった。


「うわー! すっごく綺麗」


 アキラは広場にある誰も座っていないベンチに座って、噴出した噴水の水のリアルさと勢いに感動していた。

 キラキラ光る水飛沫。

 アキラは口をポカンと開けていたが、すぐに我に返る。


「えっ、ここどこ!?」


 本当に今更だった。

 だけどここが何処かわからなくなるぐらい、リアリティで、アキラは頬を叩いてみた。

 痛い。ただ痛かった。

 如何やらここは夢の世界じゃない。

 だけど現実でもない。こんな場所、近所にない。

 だからここは……


「ここが、VRGAMEの世界? 凄い、本物みたい」


 アキラは感動していた。

 と言うか、凄すぎて言葉も出なかった。

 ここまでリアルだと、色々疑って混乱するかもしれないけど、すぐに我に返るのもアキラのいいところだった。


「えっと、まずはリナに言われて通り、ステータスの確認って」


 一瞬で思い出した。

 リナに言われたことを参考にして、左手を上下に振るとメニューパネルが現れる。


「ステータス確認は、これかな?」


 いっぱいアイコンが出てきた。

 その中で、一番左上にあった筋肉アイコンを押した。

 するとステータスが表示された。ちなみにこんな感じ。


◇アキラ

LV1 《ヒューマン》

HP 100

MP 100


筋力 3

賢さ 3

敏捷 2

精神 4

幸運 5


装備品[武器]普通の剣

装備品[防具]なし


種族スキル 【順応】

固有スキル 【キメラハント】【ユニゾンハート】


 わからない。

 わからない、項目が多すぎる。


「えっと、このスキルってなに?」


 アキラは混乱していた。

 種族スキルって? 固有スキルって? それに如何して二つも固有スキルがあるのかな。


「うーん、スキル?」

「何か困ってるの? NPCさん」


 するとアキラは話しかけられた。

「えっと、誰ですか?」

「あれ、NPCじゃないの!」

「は、はい」

「でもヒューマンよね? 本当にプレイヤー!?」

「……はい」


 居た堪れないってこういうことかな。

 アキラは小さく頷くと、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。

 だけどエルフのお姉さんは、アキラに優しくしてくれた。


「そっかプレイヤーだったんだ。私てっきりNPCかと思っちゃった」

「そうですか?」

「うん。タグを見ないとやっぱり分からないね。でもほら見て、歩いているNPCってほとんどヒューマンでしょ?」

「えーっと?」

「あっ、色ね色。青がプレイヤーで、緑がNPC。まあ、ヒューマン以外もいるんだけど、この町だと少ないかな」


 確かによく見て見れば、タグの色が違った。

 タグは目を凝らさないとわからなくて、色も正直薄い。

 わざわざ見ようとしなければ、見つけることすら不可能だった。


 そんなアキラにエルフのプレイヤーさんは快く話しかけてくれて、隣のベンチに座ると、教えてくれた。


「私はソウラ。貴女は?」

「アキラです。あのソウラさん、ソウラさんはこのゲーム詳しいんですか?」

「うーん、如何かな? 詳しいわけじゃないけど、ちょっとなら知ってるよ」


 よかったとホッとする。

 何も知らずに飛び込んで、話が展開されたら分からなくなる。


「それで何に悩んでたの? 確かスキルとか……」

「はい。ステータスに書いてある、種族と固有のスキルの違いが……」

「ああ、それ難しいわよね。でも安心して、とっても簡単だから」


 ソウラさんは教えてくれた。


「まずは種族スキルね。これは各種族に与えれた共通のスキルなのよ。これが一番のだいご味ね」

「共通のスキル?」

「ええ。例えば私のエルフなら、弓の命中性が少し上がるって効果。こんな感じで、選んだ種族ごとに決まったスキル効果が与えられるのよ」

「へえー」


 アキラは感心した。

 それからもう一つだ。


「それで残るもう一つは、固有スキル」

「固有スキル?」

「これはその人個人が持っている潜在的なーとか、この人と言えばこれ! って感じの深層心理の具現化?」

「えっと……」

「ごめんなさい。私もそこまでしか知らないの。でもどのプレイヤーも一つは必ず持っていて、これを駆使したり活かしたり、それこそアレンジしたりして遊ぶのがコツよ。他の人と協力とかしてね。でも、これまでネットにも一つしか聞いたことないわね」


 ソウラの説明はしっかりと噛み砕かれわかりやすかった。

 おかげですっきり入ってくる。

 だけど気になるのは、


「被ったら、如何するんですかね?」

「それはないわよ」

「如何して言い切れるんです?」


 当たり前の疑問だった。

 だけどこれは公式回答があるそうで、


「ほら、似てる人でも完璧に同じじゃないでしょ。双子でも、一卵性と二卵性で違ったり、全然性格違ったりしてる。そんな感じで、同じ名称、似た能力でも細部までは細かく区分化されてるのよ。だから、その心配はいらないわ」

「じゃあ唯一無二的なノリですか?」

「そう言うことよ。大体わかったかしら?」

「はい。とってもわかりやすかったです」

「そっか。そうだ、またなにかあったら私のお店に来て。これ、私のIDフレンド登録しておきましょう」


 アキラはソウラから申請された。

 そこで快く受けると、ソウラはお店の準備のためにそそくさと去ってしまった。

 一人になったアキラはそれから、少しベンチでくつろぐと、とりあえずやってみることにした。

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