【大長編】クソガキぼうけんたいと秘密の地図
館西夕木
プロローグ
1
「宝探しに行こう!」
少年が声を張り上げる。彼の右手には、一枚の紙きれがはためいていた。
「宝探し?」
少女は膝の間に埋めていた顔を上げる。
「この街には、宝が眠ってるんだよ! ほらっ、見てみ」
少年は手に持っていた紙を見せる。どうやらそれは地図のようだった。
「私、いい」
少女はぷいっと横を向く。
今は何もしたくない気分……というより、何もできないでいた。
悲しみと孤独感に圧し潰されて、何かをしようとする気力が湧いてこないのだ。足が、腕が、まるで重りをつけられているかのように重く感じる。
体が私の命令を拒否しているのだ。
動きたくても動かないのならば、ただこうやって、部屋に閉じこもっている方が楽だった。
「いいから、行こうぜ」
少年が手を取り、私を引っ張る。
「わっ」
あんなに動かすことに苦労した自分の体を、彼はいともたやすく立ち上がらせた。
廊下に出ると少年の弟たちが待っていた。
「よぉーっし、冒険隊結成だ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます