【大長編】クソガキぼうけんたいと秘密の地図

館西夕木

プロローグ

 1



「宝探しに行こう!」


 少年が声を張り上げる。彼の右手には、一枚の紙きれがはためいていた。


「宝探し?」


 少女は膝の間に埋めていた顔を上げる。


「この街には、宝が眠ってるんだよ! ほらっ、見てみ」


 少年は手に持っていた紙を見せる。どうやらそれは地図のようだった。


「私、いい」


 少女はぷいっと横を向く。


 今は何もしたくない気分……というより、何もできないでいた。


 悲しみと孤独感に圧し潰されて、何かをしようとする気力が湧いてこないのだ。足が、腕が、まるで重りをつけられているかのように重く感じる。


 体が私の命令を拒否しているのだ。


 動きたくても動かないのならば、ただこうやって、部屋に閉じこもっている方が楽だった。


「いいから、行こうぜ」


 少年が手を取り、私を引っ張る。


「わっ」


 あんなに動かすことに苦労した自分の体を、彼はいともたやすく立ち上がらせた。


 廊下に出ると少年の弟たちが待っていた。


「よぉーっし、冒険隊結成だ!」



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