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亜未田久志

人狼の碑文

喰らえ、喰らえ、喰らえ。

生とは、この世に産まれた者に課される絶対の摂理である。

死とは、逃れられぬカルマである。

故に――

――お前は何を欲する。

獣王よ、私は速さを欲します。

死すら追い付く事の出来ない絶対的な速さを。

全てを喰らいつくし、この世に顕現せよ人外獣理第一番。

疾走せよ我が豪脚


潰せ、潰せ、潰せ。

生を害する事を禁ずる戒めよ。

死を受け入れない逃避よ。

全て、無意味であると知れ――

――お前は何を望む。

獣王よ、私は力を望みます。

全てを帰滅する圧倒的な力を。

来たるべき破滅に備えろ、獲物よ。

これは決定である。

逃げる事は許されない。

発動、人外獣理第二番。

全ては破壊のために。


泳げ、泳げ、泳げ。

生とは、母なる海よりい出た証である。

死とは、母へと還る事である。

輪廻転生を受け入れよ、さすれば海はお前を受け入れる。

――お前は何を欲する。

獣王よ、私は大海を欲します。

全てを命の素へと還す大海を。

小川しか知らぬ獣に真の大海を。

大顎よ開け。人外獣理第三番。

溢れ出ろ大海。


啄め、啄め、啄め。

生とは天空には無い目指すべき場所である。

死とは地面にある忌まわしき終着である。

全てよ吹き飛ぶがいい。

――お前は何を欲する。

七人の獣王よ、私は翼を欲します。

天空より全てを貫く翼を。

立てよ、階梯。人外獣理第四番。

蒼き遥か彼方。


蝕め、蝕め、蝕め。

生とは長く続く苦しみの前触れである。

死とは一瞬で過ぎ去る救済である。

我が糧は、歪み、曲がり、うねる。

――お前は何を欲する。

獣王よ、私は毒を欲します。

世界を蝕む毒を。それこそが我が進むべき道程。

さあ、侵食せよ、人外獣理第五番。

毒を持って毒を制す。


増えろ、増えろ、増えろ。

生とは己自身、それ以外の何者でもない。

死とは否定すべきもの、それ以外の何者でもない。

私が私であるために、この世は存在する。

――お前は何を欲する。

獣王よ、私は生命を欲します。

無限に続く圧倒的な数量を。

いでよ混沌、人外獣理第六番。

無貌の蹂躪。


終われ、終われ、終われ。

生とは群である。

死とは個である。

百獣の王位は揺るがない。

――お前は何を欲する。

七人の獣王よ、私は王座を欲します。

全てを見渡し支配する神の如き頂を。

起動、人外獣理第七番。

王冠よ、民は倒れ伏すか?


獣の理、自然の摂理、弱肉強食の法則、進化の規則。

それら全て統合して人外獣理と為す。

この世は人の物に非ず!

この世は人ならざる者のためにある!

それを此処に示す。

さあ、牙を剥け、爪を研げ。

世界を食い千切り、切り裂く機会が来たのだ。

獣達よ、今こそ叛逆の狼煙。

咆哮せよ、全世界へと。

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