薄絹の女――真夏の夜の夢

藍染 迅@「🍚🥢飯屋」コミカライズ進行中

黒い泥濘

 裸の上半身に汗が滴る。

 シャツはとうに脱ぎ捨てていた。

 記録的な猛暑が続いた夜、マンションのエアコンがダウンした。

 やむなくベランダの窓を開け放った部屋に月の光が差し込んでいる。照明の光さえ暑苦しく感じた私は、部屋の灯りを消していた。

 部屋は熱泥に埋まり、月明かりの他は電気製品のLEDだけがぽつりぽつりと浮かぶ。


 蛍みたいだ。

 夕涼みとは程遠い熱気の中、茹だる頭でふと思った。


 朦朧とした意識が溶け落ちそうな深夜、玄関のドアを開けてその女が立っていた。

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