新馬戦 芝・1600m(マイル)天候:晴れ・馬場:○(良)
『……9月○○日、現在11時55分。皆様、如何お過ごしでしょうか……今日、この日、○○競馬場にて集まった初々しい若馬たちが、競走馬としての第一歩を歩もうとしております』
『メイクデビュー新馬2歳・芝・1600m、発走時刻まで、残り20分を切ろうとしております』
『例年通り、今年の9月も残暑厳しく、誰もが汗を流してレースが始まるのを今か今かと待ちわびております。皆様も水分補給を怠らないようご注意願います』
『……さて、改めて出走メンバーの紹介を致します』
『1番……、2番……、3番……』
『4番ホワイトリベンジ、体重470kg。父はマッスグドンドン。騎手は柊彩音騎手・体重○○kg。続いて、5番……、6番……』
『そして、出ました8番ダージリンロケット。体重476kg。父はダージリンマグナム、現時点での一番人気です。そして、9番……』
『以上、全9頭がデビューします』
『メイクデビュー・新馬2歳・芝・1600m、スタートまで、もうしばらくお待ちください』
『……ゲートイン完了。すこしもたつく場面もありましたが、無事に発走の準備が整いました』
『――スタート致しました!』
『極端に出遅れた馬は無し、スタートで多少なりバラつきましたが、全頭がゴールへと向かって勢いよく――っと、早くも一頭飛び出した!?』
『4番・ホワイトリベンジです。ホワイトリベンジ、ハナを進む。若さに任せた猪突猛進、前へ前へと突き進む』
『柊騎手、これは作戦か? それとも暴走か? 今回の新馬戦は早くも波乱が見え始めました』
『しかし、速い、これは速いぞ柊騎手! 大逃げか? 新馬戦から大胆な作戦に打って出たのか? それとも折り合い付かずか?』
『手綱を引いているようにも見えますが、レースはまだ始まったばかり。瞬く間に開かれる距離を表すかのように、馬群は三つの集団に別れました』
『ぐんぐん伸びてゆくホワイトリベンジの3馬身後ろにて、先行集団の5番……、2番……、1番……が追いかける形』
『その先行集団を後方より狙うのは、3番……、7番……、8番ダージリンロケット、9番……となっております』
『さて、通常は若馬と息を合わせながら騎手たちが互いの動きを読み合いながらレースは進むのですが、今回は4番のホワイトリベンジがリードを取り続けております』
『騎手たちの手綱さばきにも迷いが見られます。これが5戦、6戦とレースを重ねた馬ならともかく、新馬となれば作戦なのか掛かっているのか判断しかねる……といったところでしょうか』
『
『どうやら、各馬および各騎手は追いかけず、自分たちの競馬を進めるようです。はたして、これが吉と出るか凶と出るか、まだ判断できない段階です』
『さあ、そんなライバルたちの思惑を他所に、気持ち良く逃げる逃げる、既にホワイトリベンジは最初の直線を走り終え、カーブに入ろうとしております』
『その後方より、先行集団にて順位が目まぐるしく入れ替わっております。互いが互いの行動を伺い、若馬たちも初めてのレースに戸惑いながら挑んでおります』
『未だレースに目立った変化は見られない。先頭を走る4番ホワイトリベンジを追いかける形となっております』
『――おっと、後方にて控えていた8番ダージリンロケットが早くも順位を上げようとしております。』
『ダージリンロケット、徐々にスピードを上げて、先行集団に食らいつきました。一頭、また一頭、緩やかではありますが、ジリジリと順位を上げていきます』
『しかし、4番ホワイトリベンジは逃げる。まだ息切れはしていない。それを見て、後方集団も加速を始めた。先行と後方との距離が縮まり始めました』
『これは厳しい戦いになりました。団子状態になった3番……と6番……、逃げ場を封じられてしまった。抜け出すタイミングはあるのでしょうか?』
『その中で、大外を回って悠々と順位を上げている8番ダージリンロケット、順位を4位に上げて、先頭へと猛追……が、まだ届かない!』
『届かない、届かない! 届かないぞ! 4番ホワイトリベンジだけが最終コーナーを曲がり、直線へと入ったが、まだ足を残しているのか、減速する気配無し!』
『柊騎手、まだ鞭は打たない! 持ったまま最終直線、ゴールへの一人旅! 葦毛の影を誰にも踏ませないまま、ゴールへと一直線!』
『さあ、一つ遅れて最終直線へと入った、一塊の後方集団が一気にばらける! 内に外にばらけて、先頭へと食らいついて行く!』
『2番――猛追! 5番――猛追! 6ば――ああっと、8番ダージリンロケットが抜け出した! 一足早く抜け出して、4番ホワイトリベンジを追いかける!』
『僅かな隙間を突いて、一気に先頭へと向かう! そこは俺の居場所だと言わんばかりに、ダージリンロケットがエンジンを点火させる!』
『速い速い、ごぼう抜きだ! あっという間に一頭、また一頭と並ぶことなく前へと進み、勢い落とさずに2着へと躍り出た』
『だが、届かない! ホワイトリベンジが遠いぞ! 残り5馬身、4馬身と距離を詰めたが、それ以上を詰められない! 足を使い切ったのか、そこから伸びない!』
『ホワイトリベンジ速い! ホワイトリベンジ止まらない! 柊騎手、持ったまま、手綱を持ったまま、ゴール板へと向かう!』
『――いや、違う。僅かながら、ホワイトリベンジ伸びている! 縮めた馬身を気に食わないかのように、5馬身までまた伸ばした!?』
『まだ足を残しているのか? まだ勢いに衰えは見られない。悠々自適に逃げる逃げる、逃げ続けて行く! ホワイトリベンジ独走! 葦毛の4番が独走!』
『後方より追い込み馬、差し馬が末脚を使って加速するが、これはもう無理! 2位との距離を5馬身ほど残したまま、ラスト100!』
『ダージリンロケット、伸びる! ダージリンロケット、最後の一押しで距離を詰める! しかし、届かない、葦毛の影を踏むことが出来ない! 同じくらい離される!』
『3位から5位の入着争いが熾烈になる最中、持ったまま、柊騎手持ったまま、4番ホワイトリベンジ、馬なりに今――ゴールイン!』
『――やりました! 4番ホワイトリベンジ、見事に逃げ切った! 残暑を突きぬける大逃げがさく裂した!』
『葦毛の馬がやりました! 1番人気を下し、圧倒的なレースにて白黒を付けました!』
『続いて2着、8番ダージリンロケット! 3着に6番――、4着は……7番と9番の写真判定となります』
『順位が確定するまで、お手持ちの馬券は捨てないようお気を付けください』
『……今、確定ランプが点灯! 1着ホワイトリベンジ確定! 2着ダージリンロケット! 3着は6番――、4着は9番――、5着が7番――となりました』
『続いて、只今のタイムは……1.33.4秒! 見事です! ホワイトリベンジ、お見事! 見事に好走し、競走馬としての最初のレースを駆け抜けました!』
『……今、柊騎手を乗せたホワイトリベンジが戻ってきました』
『おっと、これは元気いっぱい。先ほどの激走も何のその、俺はまだまだやれるぜと言わんばかりに、ホワイトリベンジが軽快な足取りを見せております』
『これは、ますます先が楽しみになりそうです!』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます