赤ずきんちゃんの狼
夢呼
第1話
今日も楽しく森の中を駆け回る。
風を切って全力で走る。たくさんたくさん駆け回って、生きていることを肌で感じる。
暫く走ると、目の前に何やら茶色い生き物を見つけた。
体は丸く、長い耳。必死に草を食べている。
たまに顔を上げると、長い耳をピンと立て、鼻をヒクヒクさせる。
周りを警戒しているようだ。
僕は身を屈めて、その生き物にそっと近づいていく。
背後からゆっくりゆっくり・・・。
カサッ―――
僕の草を踏む音が聞こえてしまったようだ。
その生き物は一瞬ピタリと動くのを止めたかと思うと、次の瞬間、後ろ足に力を入れて一気にジャンプした。
それと同時に僕も大きくジャンプする。
そして、空中でそれを捕まえた。
僕は大きな口でその生き物をガッチリと咥えて、スマートに地面に着地した。
ウサギは既に僕の牙で動かなくなっていた。
僕はその場で食事を始めた。
お腹が満たされると、眠くなってきたので、その場で一眠りすることにした。
目が覚めた時は日が傾きかけていた。
僕は大きく伸びをすると、また走り出した。
真っ赤な夕陽の中を家に向かってひたすら走る。
森の中の小さな家を目がけて。
★
家の前では真っ赤な頭巾を被った女の子が扉の前でウロウロしていた。
きっと僕の帰りを待っているんだ。
僕は勢いよく彼女の前に現れた。
「ルーちゃん!」
女の子は僕を見つけると嬉しそうに駆け寄ってきた。
そして首に抱きつくと、僕の背中を優しく撫でた。
「おかえり! ルーちゃん! なかなか帰ってこないから心配しちゃった」
そう言って僕の耳の裏を優しく撫でる。
僕はお返しに彼女の頬を舐める。
「ふふ、くすぐったい」
帰ってきた時の一通りの挨拶を済ませると、彼女とゆっくり家の中に入った。
家の中は、既に暖炉に火が付いていて、とても暖かい。
僕の定位置は暖炉の近く。
家に入るとすぐに定位置に横になって欠伸をした。
「はい、赤ずきんちゃん。ルーちゃんの牛乳」
ママが赤ずきんに牛乳の入った皿を渡した。
赤ずきんは溢さないように慎重の皿を運ぶと、僕の鼻先に置いた。
「ははは、牛乳を美味そうに飲む狼も珍しいな」
パパは僕が牛乳を飲む時に、必ずそうやって笑う。
僕はそんなのは聞こえないふりをして、一気にそれを飲み干した。
軽くゲップをすると、僕はまた座り込んだ。
その隣には赤ずきんがちょこんと座り、僕を撫でてくれる。
僕は彼女の膝に頭を乗せ、横になった。
彼女が優しく頭を撫でる。その心地よさにいつの間にか眠ってしまった。
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