第3話 初めてのダンジョン

 入門所を出て、再び先ほどの受付のお姉さんの元へ行く。


「あら、揃えてこられたのですね。剣と盾、とてもお似合いですよ」


 お姉さんのにこっとした笑顔にドキっとする。よく見るとすごく美人だ。

 ダンジョンという今最も騒がれている産業の受付さんともなると、やはりこんな人がなるのか。


「それではお手続きいたしますね。こちらに手をかざしてくださいね」


 <ステータス>を覚えた時と同じように紋章が書かれた板の上に手をかざす。<ステータス>の時といい、こんなものは異世界にはなかった。

 やはり物事をより便利にする、という点では現代の人間はかなり優れている。


「はい、終わりましたよ。これで天野あまの様の登録が完了いたしましたので、次回以降はこちらに手をかざすだけでダンジョンにおもぐりいただけます」


「ありがとうございます」


「それではお気をつけていってらっしゃいませ。あ、あまり奥の階層へは進んではダメですよ。初めての方はなるべく第1層がよろしいかと思います」


「わかりました」


 お姉さんの助言に軽く返事をして、いざダンジョンへ潜る。







 

「相変わらずデカイな……」


 受付からずっと奥に進んだ先、その巨大な入口の目の前に立ち、久しぶりにその大きさを噛みしめる。

 「東京ダンジョン」の入口は、縦横それぞれ20メートルほどだ。ちらりと左右を見渡せば、同じく今から潜ろうという者、傷を負いながらダンジョンから帰ってくる者も見られる。


「おれもいくか」


 入口から入った先には長く下に続く階段がある。おそらく人工のものだろう。その階段を下りきり、門の前に立つ。


 この先はいよいよ第1層だ。


「さて、狩るか!」


 第1層の門を開け、それなりに奥へと進んでいく。

 入り組んだ構造、薄暗いダンジョンの中、前方に見えるは【スライム】、【コモドオオカミ】といった第1層によくいる魔物だ。


 まだ魔物との距離はある。だが、おれには関係ない。

 力を試すにはこれぐらいがちょうど良いかな。


 剣は腰にたずさえたまま、おれは開いた右手を前に出す。


『上級魔法 豪火炎ごうかえん


 おれの右手から紅に煌々こうこうと輝いた光があふれる。

 そしてその光は一瞬輝きを放ち、──消えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る