羨んでいたダンジョンはおれが勇者として救った異世界に酷似している~帰還した現代では無職業(ノージョブ)でも異世界で培った力で成り上がる~
むらくも航
第1章 参戦編
第1話 勇者参戦
「今日もかなり倒せたな。徐々におれの感覚を取り戻せてきているが……まだまだだ。とにかく、もっと強くならないと」
「今でも十分強いけどね」
「そうだね、いつも助かってるよ」
不思議な空間の中で成果を確かめ合う、一人の少年と二人の少女。
彼らの背後に転がっているのは魔物の数々。
なお、それらはすでに動くことはない。もう少し時間が経てば“ダンジョン”へと取り込まれ、跡形もなく消えるだろう。
装備と<ステータス>はかなり貧相なものであるにも関わらず、明らかに動きが初心者のそれではないこの少年は、二人の友人と共に今日も“ダンジョン”へ
★
“ダンジョン”。
世界中で「ダンジョン産業」といわれる産業が急成長を続けていた。
ダンジョンからは未知の鉱石や産物、現代では創ることの出来ない武器や防具など、実に様々で魅力的なあらゆるものが
だがその中でも、特に人々を魅了してやまないのが『魔法』だ。
『魔法』の存在が初めて確認されたのは日本のダンジョンだった。ある一行が世界で初めて第5層へ進んだ時に見つけた書物。
それを手に取ったことで、その者は手から火の球を出した。
それ以降、世界中でダンジョンの研究と探索が進む中で多くの『魔法』が見つかる。ある者は周囲を凍らせ、またある者は電撃を操る。人々が長らく夢見ていたファンタジーの世界が、まさに現実になった瞬間であった。
そして、物語はある少年がダンジョンに関わる事でさらに加速していく──。
★
「またダンジョン、ダンジョンって。その話題飽きないねー、まったく」
中学三年生の夏。周りの多くは部活動最後の大会を終え、やっと解放されたと遊び
だが、将来的に圧倒的多数はやはり「
「探索者」。それは文字通りダンジョンを探索し、ダンジョンからありとあらゆる未知の物を持ち帰る事を
現代において、ダンジョンから発掘される物にはとんでもない価値が付く物も多くある。もう命すら惜しくないとダンジョン
だけど、そんな話を聞く度におれは耳を塞いできた。
おれには関係がなかったからだ。
「探索者」には適性がある。適性がある者には「
誰でも覚えることの出来る<ステータス>という<スキル>を覚えれば確認できるらしいのだが、小学生の頃、おれは今では世界に一割ほどしか存在しない「
それからは
現代において主役にはなれない、いわゆるモブというやつだった。
というよりむしろ、ダンジョンについて話す者についても、
「今ならその気持ちがよく分かる」
おれ、
謎の光に包まれ、気が付けばそこは夢にまで見た世界。おれが思い描いていた通りの剣と魔法の世界。おれだって幼い頃は当たり前に『魔法』に憧れていたんだ。
勇者として召喚されたおれは今までの自分を見つめ直し、四年という歳月の末、魔王討伐という使命を
もちろんたくさんの出会った人や、思い出があった。だが、勇者の使命を成し遂げたおれは、それ以上異世界に留まることがかなわなかったそうだ。別れを惜しみながらも現代へと戻って来たおれは、同じ日付、転移した頃のままの姿だった。
そして、現代に帰還したおれはある違和感に気付く。
たまたま目に入ったダンジョンの情報が。
そこでまさかと思いネットで調べたところ、そこに住まう魔物、未知の発掘物の数々……ついには『魔法』までもが。
似ているどうこうの話じゃない、おれが異世界で見てきたもの、そのものなのだ。
異世界で全く気付かなかったわけではない。この事について疑ったこともあったが、ダンジョンについては
それに気付いたおれは困惑もあれど、ポジティブに考えた。
長い年月の努力の上に魔王を討伐した経験が、おれを強くさせたのかもしれない。
おれはダンジョンについて誰も至ったことのない場所の事まで知っている。
『魔法』や<スキル>についても同様。
おれは異世界で五十を超える『魔法』、百を超える<スキル>を習得した。『魔法』が一つ見つかるごとに世界中でニュースになるこの現代を差し置いて、だ。
これならばおれもダンジョンへ挑む事が出来る。
今までは「
ダンジョンのせいで散々惨めな思いをしてきたおれは、ダンジョンで成り上がる。
たとえ現代では「
おれは勇者だ。
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