私の許嫁は怖い人…?

詩羽

第1話 別れと出会い

「パパ、ママ…?」


私の目の前には呼びかけても反応のない両親。

その顔は青白く、頬を撫でると氷のように冷たくなっていた。


ひき逃げだった。

いつものように2人で散歩に出かけて、いつものように「ただいま」って帰ってくるとばかり思っていた。


「なんで…私を一人にしないでよッ」


母の体にしがみついて泣く私。

一生分の涙を流したのではないかと思うくらい泣いた。


そんな時、霊安室のドアが開いた。


「…お前が葉月萌果(はづきもか)か?」


「そう…ですけど…誰ですか?」


「お前の許嫁だ」


「……は?」


その人はスーツ姿になんとも言えないほどのオーラを纏っていた。

まるで私とは違う世界の人のような…


「お前の両親には昔世話になったんだ。所謂、命の恩人といったっところだ」


「それが、なんで私の許嫁に?」


「それは…とにかく、お前の面倒は俺が見てやる。今日から一緒に暮らすんだ」


「…嫌です」


「は?」


「だって、今日初めて会ったし…いきなりそんなこと言われても、男の人と2人でなんて…」


「あぁ、それなら大丈夫だ。俺と2人ではないからな」


「…え?」


2人ではなく他にも人がいる…?

一体どういうことなのだろう?


「とにかく、今日は俺の家に来い。お前の家の方はこれからゆっくり整理するといい」


「…わかりました」


私はその人の言うとおりにする事にした。

今は1人でいるのが辛い…それに初めて会ったのになぜか懐かしい気がする。


きっとパパもママも颯杜さんと一緒にいる方が安心だよね…?


「あ…名前…」


「ん?俺か?俺は…椿颯杜(つばきりゅうと)」


「颯杜さん…」


この時から私の人生は…180度変わることになった。




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