番外編6
「ホントに、過去の僕は何やってる訳?! 何で他国を滅ぼすのかなぁ?! 僕はバカなの?!」
「兄貴は、オレがセーラを殺したと思わせたら、嬉々として国を滅ぼした事を伝えてきました」
「やっぱり僕はバカだよね?!」
「オレの口からは何とも……」
「イオス! そこはトドメ刺していいよ! 僕は、どんな事したのかな?」
先程とは違い、クスクス笑いながら聞くフォスを嬉しそうに見て、イオスも笑いながら答える。
「あんなに嬉しそうに罪を告白してくれるとは思いませんでした。しかも、自分が皇帝になれず狼狽して、セーラを見た瞬間にセーラの国は自分が滅ぼしてオレに罪を擦り付けたと仰った時は、大勢の貴族の前で何を言うんだこの兄貴は……と、思いました」
「あああ……僕のバカ……よくそれで幽閉で済んだよね……愚か過ぎるよ……過去の僕……いや、未来の僕なのか……?」
「兄上はそんな愚かな事はなさいません!」
「イオス、さりげなくトドメ刺しに来たね」
「え?!」
「兄貴は、愚かって言ってる」
「あああ! 申し訳ありません! そんなつもりでは! 兄上は、何もしていないのですから気にする必要はありません! 兄貴と兄上は別人です!」
「うん、ようやく別人と思えてきた。いくらなんでも僕はそんな事しない。するとしたら、もっと上手くやるよ」
「そうですね。ある意味今の兄上の方が怖いです」
「え?! 僕怖い?!」
「フランツの体温を奪ってる時は、ちょっとだけ怖かったです。でも、お怒りも当然だと思いますし、兄上に本音が言えるようになって嬉しいです」
そう言うイオスの目には涙が浮かんでいた。フォスも、嬉しそうに笑った。
「よし、情報を擦り合わせて今後の予定を立てよう」
「今後の予定ですか?」
「反乱軍なんて、自然発生する訳ないだろ? どこかに原因がある筈だ。反乱の芽を潰してしまえば、イオスは安心してセーラと過ごせるだろ?」
「兄上……ありがとうございます」
「僕と言うか、兄貴はセーラが好きだったらしいけど、僕は年上の女性が好みなんだよね。5歳も下の弟の婚約者に横恋慕なんてしないよ。だから安心して」
「年上ですか?」
「うん、年上のお姉さん良いよね。兄貴は婚約者居なかったの?」
「居ませんでしたね」
「不思議だね。イオスの婚約話は出たんでしょ?」
「はい。セーラが行方不明になってからは婚約を拒否していましたが、話は来ましたね。兄貴は……拒否していたのかどうかも分からないです」
「多分、拒否していたんだろうね」
「まあ、そうでしょうね」
「なんで拒否してたか分かんないけど、ま、もう考えても仕方ないしこれからの事を考えよう。イオスが幸せなら僕も嬉しいしね」
「オレも兄上が幸せになってくれたら嬉しいです!」
兄と本音で話せる事がこんなに幸せだと思わなかった。イオスは、嬉しくて嬉しくて、その日はそのまま兄のベッドで眠りについた。
あれから、イオスとフォスはとても仲良くなった。母も元気なままで、父も穏やかに過ごしている。
イオスは、全てが以前とは違った世界で大事にされて育った。イオスは相変わらず神童と呼ばれていたが、教育のペースを抑え目にした事と、いつもフォスから教わったからだとフォスを立てていたので、どちらが皇帝になっても素晴らしい治世となるだろうと皆が期待していた。
母が死ぬ筈の日も穏やかな時が流れ、母は今でも健在だ。
セーラは、今では年の半分は一緒に居る。成人したら、すぐに結婚する予定だ。
成人は、18歳。以前ならイオスは絶望していて、セーラは暗殺訓練をしている時期だ。
フォスにも婚約者がおり、もうすぐ結婚式を挙げる。イオスの結婚式は、3年後の予定だ。
全てが順調だった。
「セーラ、国は問題なさそうか?」
「うん、フォス様のおかげで反乱軍は壊滅したよ。もともと飢饉のせいで食い詰めた子達だったから、強制労働させながら、向いてる事を探ってる。反省はしてるみたいよ」
「……そうか」
セーラの国を滅ぼした原因である反乱軍は、計画の段階で捕縛された。
まだ何もしていなかった事もあり、罪は軽かったようだ。
だが、イオスは僅かな違和感を覚えていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます