△月15日
退院以後、俺の人生は一変した。大金が転がり込んだだけじゃない、更に事故を起こした女の親父の伝手で転職も出来た。世間体か、それとも人が良いのか。連日俺の元にやってきてはヘコヘコ頭を下げるのも、その隣でオロオロする女を見るのも気分が良かったが、だがいい加減ウンザリしてきた俺は奴等にこう言ってやった。
"気にしなくて良い"ってな。何せ俺には不幸を金に換えるお守りがあるのだから。そしたらその親父、何を勘違いしたのか俺のその態度が気に入ったようで、退院後に子会社で働かないかと持ち掛けてきた。
以前よりはマシという程度だが、それでもあの労基違反上等なクソ会社と比較すれば天国に変わりはない。都内の一人暮らし、更に最低賃金スレスレのブラック企業では買えなかった車を購入した俺は久方ぶりにクソ田舎へと戻って来た。墓参りをする為だ。高い花、高い線香、そして真心。こんな幸運を体験できたならばこれ位は痛くも痒くもないし面倒だとも考えない。
夏場の茹だるような熱さとやかましく鳴き続けるセミの声も同じくだ。不気味に静まり返った墓地を巡り、バーサンの墓の前までやって来た俺はゲン担ぎを兼ねて手を合わせた。
「不幸の後に幸運は訪れる。必ず……」
また聞こえた。だがもう不気味だとは思わない。何せあの事故からコッチ、俺の人生は好転したのだから。ならばこの声はきっと幸運の女神だ。
「あぁ。分かってますよって。じゃあ次もよろしく頼むぜ。」
手早く墓参りを済ませた俺は、何処から喋っているか分からない声に向けてそう依頼した。俺とアンタは
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