不幸(しあわせ)

風見星治

◎月5日

 禍福はあざなえる縄の如し。昔の人間はよくもまぁそんな適当な言葉を思いついたものだ。今日も今日とて無意味に上司から叱られ、漸く残業が終わって外に出てみれば土砂降りの雨。天気予報は晴れだったろうが、と愚痴っても天気が変わるわけもなく、仕方が無いと濡れて帰れば家に着くころには見事に止む。


 一事が万事この調子、不幸ばかりで幸運なんて来やしない。あーぁ、宝くじでも当たらねぇかな。そう思いつつ日課のキャンペーンサイトを巡るが、結果は見るまでもなく惨敗。なんでこんなについてねぇんだよ。あぁウゼェ。


 あるいは……俺以外の誰かに幸運が回っているのか?ならその分を返せ。と、誰に怒鳴れば良いか分からない気分を引き摺ったまま俺は田舎まで戻って来た。親父側のバーサンが死んじまったんで葬式に顔出す為という訳だが、こんなありふれた理由であっても会社ではひと悶着あった。


「どうせ嘘だろ?あとで証拠出せ、出ないと忌引き休暇は認めない。」

 

 あのクソ上司どうかしてるぜ。

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