第122話 ヴィア主任との会話とダンジョンの機能の秘密
エンバラ2日目の朝は剣術の鍛錬から始まった。
昨晩の宴の最後の舞を見てから身体を動かしたくてしょうがなくなっている。
素振りをしているとヴィア主任が起きてきた。今日は早起きしたんだと思い、素振りを中断して挨拶する。
「おはようございます。ヴィア主任。今日は良い天気ですね」
「あぁ、おはよう。君は魔術が使えて、貴族なのに剣術をするんだな」
「剣術が使えないと敵わないモンスターが出てくるもんで。まだ制覇していないBランクダンジョンのためでもあります」
ヴィア主任が苦笑して話を続ける。
「その言葉を世の貴族に聞かせてやりたいな」
「ヴィア主任は、何か貴族に思うところがあるんですか?」
「里では小さい時から、貴族とはダンジョン活動をしなくてはならないと教わった。貴族は血を残す仕事も重要とも教わった。ダンジョン活動と血を残していく行為は、どちらも大事な貴族の仕事だってな。だが実際の貴族はどうだ? 血を残す事ばかり考えている。ダンジョン活動は平民の冒険者ばかりだ」
ヴィア主任が悲しい顔を浮かべて言った。
「その現実を見て、私は貴族に幻滅したよ。だから平民に混じって冒険者活動をしていたんだ」
その言葉を最後にヴィア主任は僕から離れて行った。
朝食をいただき、昨日、オウカさんと挨拶した屋敷に通される。昨日と同じ場所に座った。今日はミカとヴィア主任とサイドさんも参加している。
オウカさんの隣りにはシニアさんが座っている。オウカさんは僕が座ると口を開いた。
「昨日は楽しんでもらったかな? 里の皆んながアキ殿達が満足したか心配しておってな」
「心からの歓迎の宴ありがとうございました。昨日の宴に参加できただけで、エンバラに来た甲斐があります」
「そう言ってもらうと里の皆んなが喜ぶ。ありがたい事だ。どれ、そろそろ本題について話さないとな。どこから話せば良いやら」
そう言ってからオウカさんは話を始めた。
「そうだな。エンバラの里はソフィア・ウォレールが切り拓いたんだよ。そしてエンバラの里のエルフに願いを託した。詳細は代々の里の長に伝わるようになっている。その1つが蒼炎の魔法を使える人が出た場合、エルフがそのパーティに入り冒険者活動を助けると言うのがある。ただソフィアは蒼炎の魔法の使い手はいつ現れるかわからないと言われたそうだ。100年後かもしれない、200年後かもしれない、今回のように2,000年後になるとはソフィアも予想していたか確認したいけどな。蒼炎の魔法の使い手が現れる可能性があると知っているのはエンバラの長とその家族のみじゃ」
あれ? それならなんでヴィア主任は蒼炎の魔法を知らなかったの?
僕は疑問に思い質問する。
「ヴィア主任はオウカさんの娘さんですよね。どうして蒼炎の魔法を知らなかったのですか?」
「それは30年前のカッターで起きたエルフ排斥運動のせいじゃ。その時のエンバラの長と家族はエルフ排斥運動を止めさせるために、カッターに行っておったんじゃ。西の守護者のエアール公爵家と話し合うためにな。しかし皆殺しにされた。エンバラの長の血脈が途切れた。それで我が家系がエンバラの長となったのじゃ。私がエンバラの長になってから、この跳ねっ返りの娘のヴィアは里に全く連絡して来なかったからな。蒼炎の事を知らなくて当たり前じゃ」
「さて、蒼炎の魔法の使い手の仲間になるエルフは基本的には誰を選んでもらっても構わない。そのエルフにはソフィア・ウォレールが晩年開発した魔法を伝える必要があるからな」
そんな簡単に仲間と言われても困るなぁ。一緒に戦う仲間なのに。
「そんな事を言われても困ります。冒険の仲間はそんなに簡単になるものでは無いです。少なくとも僕は嫌です」
「それではこちらが困るんじゃ。ソフィア・ウォレールの願いは封印のダンジョンの制覇じゃ。それには最低、火属性、水属性、風属性、金属性の4人で臨む必要がある。蒼炎は火属性だ。そちらの冒険者パートナーのミカ殿は金属性じゃ。まだ風属性と水属性がいないではないか。ソフィア・ウォレールは蒼炎の使い手の仲間の風属性はエルフから出したいと願っておった。ここは何とかお願いできないか」
うん? 蒼炎ってやっぱり火属性なの? あっさり言われたぞ。
「すいません。蒼炎は火属性の魔法なんですか? 僕は火属性の普通の魔法が使えないのですが?」
「アキ殿は蒼炎の魔法が分かってないな。蒼炎は火属性の魔法の上位に当たるものだ。晩年のウルフ・リンカイと憎きカフェ・ウォータールが開発した魔法じゃ。上位魔法の蒼炎が使えるようになると下位の火属性の魔法なんか使えなくなるんじゃ」
今度は【白狼伝説】の主人公の仲間のカフェの名前が出てきた。それに家名がウォータール!?
おまけに蒼炎って火属性確定なの? そして僕は火属性の普通の魔法は使えない!?
頭がおかしくなりそうだ。
ウルフとソフィアとカフェ。これでガラムが出てくれば【白狼伝説】の仲間が全て揃う。
オウカさんの話を妨げるのはちょっと悪いかなっと思ったが止まらなかった。
僕はドキドキしながら尋ねた。
「すいません。先程から伝説の方の名前が出てくるんですけど、もしかしてガラムさんの名前も出てきたりしますか?」
「アキ殿は先走るのぉ。これはエンバラの長しか知らない話だが、蒼炎の魔法の使い手が現れたのなら話して問題はあるまい。ダンジョンを作ったのはガラム・アイアールとカフェ・ウォータール、後は神獣じゃ」
ダンジョンを作成した!? ガラムとカフェと神獣が作った!?
完全に頭の許容範囲をこえている。
呆然とした僕に分かりやすくオウカさんは説明してくれた。
「魔石のエネルギーや魔法のエネルギー等を使うと、空気中にエネルギーのカスである
エネルギーのカスである
そして
オウカさんの説明が続く。
「その事に対策を考えたのが、憎き天才カフェ・ウォータールじゃ。
ダンジョンがエネルギーのカスである
それにしてもダンジョンを作るなんて。
オウカさんの言葉が現実感を感じなくなってきている。それでも説明は続く。
「
ダンジョンでモンスターの死骸や血、魔法のエネルギーが吸収される事に一定の説明がされているのか? 僕はわからなくなってきた。耳に聞こえるオウカさんの声が遠くなってきた。
「ただこのサイクルを回すためにダンジョン内である程度モンスターを倒していかないといけない。その為作られたのが冒険者ギルドじゃ。エネルギーの元である魔石の買い取りをし、ダンジョン活動を安定的にする冒険者を作ることに成功しておる。
今度は冒険者ギルドか。確かに魔石の買い取りと販売を独占している。
オウカさんの話が続く。
「ただしBランクダンジョンとAランクダンジョンは違うのじゃ。この2つは試練のダンジョンとして設定されておる。4属性が力を合わせないと制覇は無理と言ってよい」
無理と言ってもBランクダンジョンは僕とミカの2人だけで制覇してるけどな。
オウカさんが真剣な顔で僕に語りかける。
「ソフィア・ウォレールはそれを宿題と言っておったそうな。その宿題は蒼炎の魔法の使い手がやってくれるとな。また自分の宿題を自分の血を引く子孫に託したんじゃ。そのため蒼炎の魔法の使い手のパーティの風属性の仲間はエルフにしてくれないと困るのじゃ」
遂に僕の頭はパンクした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます