第59話 火宮のダンジョンの攻略
2月になった。
あれから3回火宮のダンジョンを捜索している。3階層まで行ってみたが問題は無かった。一層の距離は3キロルくらい。水宮のダンジョンと変わらない。一層を進むのに必要な時間は
今のところ接近戦でのミカは無敵だ。僕はミカのサポートを受けながら接近戦を戦ってみた。まだまだ僕は危なっかしい。
ボス戦に時間を取られても往復15時間くらいか。無理すれば1日で帰って来れるかもしれない。
軽い見学のつもりだったがここまできたら火宮のダンジョンの攻略を目指すことにした。念のためボス部屋で休憩する予定だが、消耗の程度で考えることにする。
決行は明日に決めた。朝早くにダンジョンアタックの開始だ。
僕も立派な冒険者になったのかもしれない。
未知のダンジョンのボスを倒すと考えるとドキドキが止まらない。自分が【白狼伝説】の主人公になった感じだ。
明日のダンジョン制覇を目指してベッドに横になった。
火宮のダンジョン攻略の朝、まだ日が出る前に家を出る。軽く雪が舞っていた。ボムズで雪が降るなんて珍しい。リーザさんが1人4食分のお弁当を作ってくれた。ありがたい。
今回は馬を使わず徒歩で火宮のダンジョンに向かう。それなりに時間がかかるため、付き添いのギルド職員を馬のために外の寒い中待たせるのが悪いと思ったから。
火宮のダンジョン前に着いた。
ミカと目を合わせる。
さぁ行こう!
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
火宮のダンジョン攻略がスタートした。朝早い時間なのにミカの身体はキレている。いつもどおりイフリートを屠っていく。
3階層の終わりまで問題なく攻略。このまま先に進む。
4階層に初めて降りる。ダンジョンの構造は今までと変わっていない。イフリートの体長が2メトルほどに大きくなった。普通のイフリートが1.8メトルくらいだから1割り増しって感じか。ミカがこれまでどおり討伐していく。
4階の終わりまでかかった時間は
5階層になって火鳥の大きさがひと回り大きくなった。まぁ火鳥だから関係ないけど。ダンジョンの道順はほぼ一本道。このままなら良いな。
6階層は5階層とほとんど変わらない感じ。このまま集中力を切らさず進む。ここまで蒼炎は一発も撃っていない。
7階層のイフリートは大きかった。2.5メトルはある。それでもミカの戦闘は安定している。相性の良い装備と高レベルなのが良いのだろう。安心してみていられる。
7階層の奥に高さが5メトルくらいの扉があった。間違いなくボス部屋だ。扉の前で改めて装備を確認する。水筒から水を飲み、そのままミカに渡す。ミカは凄い勢いで水を飲んでいた。まぁほとんど一人でここまで攻略しているからな。
「ミカ、体力は大丈夫?」
「まだまだ動けるけれどお腹が空いちゃった。ボスを倒したらリーザさん特製お弁当を食べましょう。」
ミカはそう言って笑顔を浮かべた。
僕はこれなら大丈夫と思いボス部屋の扉を開けた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
Bランクダンジョンの水宮のダンジョンのボスであるボス
ここも同じBランクダンジョンだ。注意しないといけない。
今回の作戦はミカが接近戦をやりたいと僕に言ってきた。「遠距離からの蒼炎のほうが安心じゃないか」と僕は言ったがミカが「アキくん、これからの事を考えて。接近戦が必要になる時があるかもしれないから」と言って譲らなかった。
僕はミカの提案を受け入れた。
もともとミカは僕が奴隷として買って、冒険者になるのも僕が誘った。まぁ奴隷だから逆らえないんだけど。
そのミカの自らこうしたいと言う気持ちを大切にしたい。ポーションはある。余程重症になるか一撃死にさえならなければある程度問題は無いはず。
作戦はボス部屋に入ったらボスを確認でき次第ミカが防御を固めながら接近戦に持ち込む。僕は適度な距離で戦闘を確認しながらいつでも蒼炎を撃ち込めるように待機する。状況によってはボス部屋からの退避も考慮する。
ボス部屋は静かだった。赤い煉瓦の壁。奥には溶岩がある。
ボス部屋の真ん中にイフリートがいた。黒い身体をしている。
入り口から30メトルくらいの距離。
ミカが右手に【昇龍の剣】、左手に【昇龍の盾】を構えてイフリートに突進する。
イフリートの体格は普通のイフリートくらいの1.8メトルくらい。
ミカがイフリートまで15メトルの距離まで近寄った時、イフリートの身体から炎が上がった。
3メトルくらいの炎の柱になった。ミカが急停止した。その瞬間、炎を纏ったイフリートがミカに突っ込んできた。
速い!
通常のイフリートの1.5倍程度の速度だ。
イフリートは右拳でミカに殴りかかる。
盾で受ける。受け止めた瞬間にイフリートはその場で後方宙返りをしながら左脚でミカを蹴り付ける。
この蹴りもミカは盾で受けた。
しかしこの蹴りでミカの盾は左に大きく弾かれた。イフリートは続け様に攻撃を仕掛ける。ミカは剣と盾で防御に徹している。
あまりの速い戦闘スピードに僕はサポートができない状態だった。
今までのイフリートは体術を使わずに魔法で攻撃してきた。
しかし、このボスのイフリートは体術で攻撃してくる。普通のイフリートが遠距離戦タイプとしたらこのボスイフリートは接近戦タイプだ。
怒涛のイフリートの攻撃に防戦一方のミカ。
まずい。
このままだと押し込まれると僕は焦った。
何か出来る事はないかと考えたが、このレベルの高い接近戦に僕も混じったらミカの邪魔になる。
遠距離からの蒼炎もこのイフリートの速さだと当てる自信がない。ミカにも余波が行くかもしれない。ただ呆然とミカとイフリートの戦いを見ていた。
攻撃を繰り出してもなかなか有効打を当てられないイフリートが少し大きく右手を振りかぶった。
渾身の右ストレートだ。
ミカはその拳を盾を下から振り上げて軌道をずらす。
その勢いのまま盾をイフリートの顔にぶつける。
その瞬間イフリートが真っ二つになった。
何が起こった!?
良く見ると振り上げた左の盾が見える。右手も剣を振り上げた状態だ。
数秒後、真っ二つになったイフリートの身体はダンジョンに吸収されていく。
僕はミカに近づいて言葉をかける。
「凄い速いイフリートだったね! 何でイフリートが真っ二つになったの? 良く分からなかったよ」
ミカはまだ戦闘中の怖い表情だった。少し立つと僕に笑顔を見せて口を開いた。
「イフリートを倒した攻撃は剣を逆手にして盾を振り上げたと同時に剣を振り上げたのよ。カウンターのタイミングをずっと狙っていたの。大振りが来たら一気に決めてやろうと思ってね。上手くいって良かったわ」
僕はそれを聞いてミカの凄さに感嘆し、自分の見る目の無さに落ち込んだ。
押し込まれて不利になっていると思っていたミカが相手の大振りを狙って冷静に対処していたとは……。
ミカはたぶんまだ余裕があったのだろう。
僕は剣術の技量も経験も全然足りてないことに改めて気付かされた。
今日のイフリートは僕の蒼炎だと当てられなくて負けていた可能性が高い。
接近戦の鍛錬をもっとして自分の戦闘の引き出しを増やす必要性を感じた。
ミカを見て僕は提案する。
「ダンジョンは今回で当分お休みにする。もっと剣術の鍛錬を頑張るよ。ご指導よろしくねミカ」
キョトンとしたミカがこちらを見て言った。
「そういえば最近剣術の鍛錬してないもんね。戻ったらガンガンやりましょうか」
黒い笑顔のミカを見てしまったと思った。
「頑張るけどお手柔らかにね」
その言葉を僕は絞り出した。
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