第14話 とりあえずお茶しましょう
大きなテントの中には、商人風の男や冒険者風の厳つい男達が待っていた。
なんか、オッサンの人口密度がすごくって、暑苦しい。その中にいる唯一の女性が僕達に席を勧めてくれた。露出度が高いアーマーを着ているナイスバディなお姉さんだ。ううう、目のやり場に困る。
「ログサ渓谷に、偵察を送っている。その情報を待っている所なんです」
一番奥にいた糸目の男が、そう言った。その男の人は30歳台だろうか、柔和な感じで笑っているように見える、人当たりのよさそうな人だ。
たぶんこの人が、このキャラバンのまとめ役であるオルロープ商会のエラルドさんなんだろう。
偵察に向かった者は、スキル<俊足>と<隠密>を持っている、多分半時も掛からず帰って来るだろうと、彼も同じように席を勧めながら、そう言った。
アリシアは、同行させてもらった事の謝辞を伝えて、席に着くと、オッサンことバッファ師匠が、僕たちを紹介してくれた。
「この娘は、ターラントの冒険者ギルドのマスターの娘さんで、アリシアと言う。そして、隣にいる少年が、この状況を察知したレンじゃ」
「おお、それはそれは。オルブロ様には、とてもお世話になっております」
エラルドは席を立って、こちらにやって来ると、胸に片手を当てた状態で、アリシアに向かって礼をした。そして、僕を方を見ると、
「そうですか、レン様は、かなり有益なスキルを持っているようですね。本当に感謝します」
僕も、慌てて立ち上がり、礼をした。
偵察の者が帰ってきてから、今後の対応を決めましょうか。どうぞ、お茶でも飲みながら待ちましょう。エラルドはそう言うと、メイド姿の女性が、皆の前にお茶を出していく。
「アリシア様、レン様、こちらにおられますのが、このキャラバンの護衛をして頂いております。冒険者パーティーの皆さまです」
そう言って、全員を紹介してくれた。5人の銀級パーティーが二組。一つは、2メートル以上はありそうなデカくて、頭がとっても眩しいオッサンで名はゴルグ、彼がリーダーをしている『黒竜の牙』だ。
もう一つは、赤みがかった金の髪を持つ、あのナイスバディなお姉さん、マヌエラがリーダーを務めるのが『コーラルリング』と言うらしい。
「レンと言うのか、斥候スキルがある奴でも、気づかなかった状況をよくわかったな。ところで、他に何か解った事はあるか?」
と、ナイスバディなお姉さんが聞いてきた。大柄でナイスバディ、見た目厳つい感じだけど、かなりの妖艶美人さんなので、ちょっと照れてしまった。
異世界GPSと僕が呼んでる<周辺MAP(範囲小)>と<気配察知>と言うスキルは、多分半径5キロ位の情報が解るようだ。(範囲小)とあったので、最初はそんなに優秀だとは思わなかったんだけど。かなりのチートスキルだったらしい。
「えっとですね」
ナイスバディな姉さんに声をかけられたことで、照れかくしに、頭をポリポリかきながら、
「あの、中央にいる30人の野盗らしき一団の後ろに、5人ほどの一般人が見えるんですね。全員が子供みたいなんですけど、これってどう思われます?」
その事を伝えると、皆、頭を抱えた。
「ああ、人質がいるのね」
◇◆◆◇◆◆◇
そうこうしている内に、偵察が帰ってきたようだ。
「やはり、いましたよ。エラルド様」
偵察をしてきたという男は、『コーラルリング』の斥候役で、<隠密>スキルを持つニヤケ顔の男だ。
「崖の上には、弓を持った奴らが15人づつ隠れておりました。中央は20人が馬から降りた状態で、くつろいではいましたが、その前後に5人づつ、岩場の陰に隠れるようにいましたぜ。見張りと魔導士でしょうかね。ただ、面倒な事に、子供が5人ほど縄で縛られた状態で転がされていました」
報告を聞いたエラルドは、バッファ師匠に向き直り、指揮をお願いした。その旨を両パーティーに確認を取った後、今後の作戦の指示を求めたのだ。
「バッファ様、どういたしましょうか?」
「うむ。この中に、強化スキル等をかけられるエンチャンターはいるか?」
師匠が、そう言ったところ、『黒竜の牙』のメンバーに、<身体強化><速度アップ>の強化スキルをかけられ、相手側には<弱体>のデバフをかけられるメンバーがいるとのこと。また、『コーラルリング』のニヤケ顔が言うには、自分が認識した仲間だと、一緒に<隠密>状態になれると言う事らしい。
「それじゃ、ここから作戦じゃが、お前らのパーティー毎で、両側にいる奴らを片方づつやれるか?気づかれずに、それも速やかにだ」
「おお、任せろ!」
「了解だ!」
「次は、アリシアじゃが、どの位の範囲の結界を張れる?」
「えっと、このキャラバン全部は無理ね。精々5台が限度だわ」
その返事を聞いて師匠はエラルドに指示をだす。
「じゃ、代理、ここの周辺の一画に馬車5台を集めて、貴重なものは、そこに入れておいてくれ。商人たちは、その馬車の近くで一か所にまとまってもらってくれないか?」
「了解しました。すぐに手配します」
エラルドは、早々にテントを飛び出していった。それを見送った師匠はアリシアに向かって指示をだす。
「アリシア、お前は、馬車5台と商人たちの周りに結界を張った後、マヌエラ達と同行し、お前一人で盗賊の背後に周り、ガキらに結界を張ってくれ。後ろにも見張りがいるようじゃ、一人で大丈夫か?」
「任せておいて。それと、師匠はどうするんですか?」
師匠は、まるでいたずらを思いついたやんちゃ坊主な様にニヤリと笑うと、僕のローブを引っ張り引き寄せた。
「ワシか?ワシはこの坊主と二人で、真正面から突入じゃ!」
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