第12話 キャラバン隊

 ターラントに向かう事になり、朝早くから、森の中の道なき道をつき進んだ。アリシアは僕の体力を考えてくれて、合わせてくれているようだ。彼女だけなら、あっという間に、この森を抜けれるだろうに、本当に申し訳ないです。


 アリシアの結界のお陰で、魔の森の中でも安全に野営する事ができ、なんだかんだ有りながら、次の日の昼過ぎには、森を抜ける事が出来たのでした。


 後は街道へ出て、道沿いに、西へ進むだけだ。


 馬車なら二日位で着くって言ってたけど、徒歩だと、野営は避けての開拓村等に寄りながらの遠回りになるので、一週間位かかるとのことだった。


「ああ、しかし、たぶんそんなにかからないよ。街道なので、途中に乗合馬車か、どこかの商隊にでも出会えるかもしれないからね」


 商隊の馬車にでも会えば、乗せて貰えるよう頼んでみるとの事だった。



 周りの景色を見ながら街道を進んでいると、思わず、声に出して言ってしまった。


「空が青いな!」


 気温は、秋が近づいているらしく、少し肌寒くなってはきているが、空は高く、清々しい天気だ。どこまでも続く街道と、果てしなく広がる自然の風景。こんな景色は日本にいては、眼にする事はきっとないと思う。


 アリシアが、僕の服が変わっているので、不審がられるからと、フード付きローブを貸してくれた。風よけにもなるし、対魔法防御付きだそうで、なんか、魔法使いになったようで、かっこいい。なんだか、心がウキウキしてくる。


 今日は、とてもいい天気だ。ああ、こんな日は、蓄電日和だと蓮は思った。ソーラーパネルを、リュックサックに取付。気分がいいので、『チクデンの歌』を自作で歌いながら、街道を進むことにした。


「リュックサック、バックパック♪アウトドアにハイキングー♪ああ、よいよい!空に太陽がある限りー♪チクデンチクデンでんでんでん♪ソーラーパネルバッテリー♪」


 よーし、二番を歌うよー!って、アリシアに言ったら、すごい顔で呆れられた。



 <周辺MAP制作(範囲小)>のモニターを出して、移動した道を記録しながら歩いていると、後方から、何かの一団だろうか、緑の点が複数現れた。


「アリシア、なんか後ろから来ますよ。ほら、あの土煙。魔物じゃないですね」



「ああ、まずは、相手の確認をしないとな。たまに、盗賊とかの輩がいるからな。安易に声はかけられん」


 しばらく、その一団が来るの、監察しながら待つこと、10分ほど。


「あれは、キャラバン隊だな」


 キャラバン隊は、商人の一団だとの説明を受けた。


「盗賊や魔物から、身を守るため、商人達が隊を組んで行商の旅をしているんだよ。大きな商会は、強い冒険者を複数雇っているからね。その一団に便乗する個人商もいて、かなりの大人数になってくるわけだ」


 大きな一団に、ノコノコ突撃する輩はそうそういないわけだ。そう言っているうちに、キャラバン隊がかなり近くまで来たので、


「あの、それじゃ、ヒッチハイクでもします?」


 ほら、(。・ω・。)b⌒♪みたいに、僕は親指を立てるポーズをした。



「ヒッチハイク?なんだそれ。いや、それよりも」


 アリシアは、急にフード付きのローブを脱ぎだした。



「えええ、アリシア、お色気で止めるんですか!!」


 蓮は思わす、両手で眼を隠した。



                ◇◆◆◇◆◆◇



 キャラバン隊の先頭にいた、いかついオッサンの横に僕は座らされている。オッサンの顔は髭だらけで、むき出しの腕は筋肉の塊だ。体格もごっつい、ほんと、暑苦しい。


 荷台に乗っているアリシアが顔を出して、横で御車をしている男に声をかける。


「師匠、キャラバン隊の護衛ですか?」



「アリシア、ワシは、お前の師匠になった覚えはないぞ」


 ちらりとアリシアを見たオッサンは「ふん」と言って、そっぽを向く。


「レン、この方は、金級冒険者で鍛冶の名人でもある、バッファ師匠だ。大勢の弟子を持っている超有名人なんだよ」


「お知り合いだったんですね」


 ち、アリシアがヒッチハイクする姿を想像しちゃったじゃないか。。。


「ああ、以前、私の父とパーティーを組んでてね。私が幼い頃から、よく面倒を見てくれた方なんだよ」


「お前は、お転婆でほんと手が掛かったからな。小さい頃から父上のような冒険者になると、よくワシに突撃してきよって」


 バッファ師匠は、カ、カ、カ、と大笑いしている。そして、親指で僕をさして、アリシアに聞いてきた。


「ところで、この坊主はだれなんだ?初めて見る顔だな」


「はい、私も二日前に会ったばかりなんですが。詳しくは、父の所でお話しいたします。私も会ったばかりで、あまり詳しくは知らないのですが、とても有益な方である事は保証いたします。是非、師匠もお話を聞いて頂ければと」


 バッファは片手で髭を撫でながら、うむ、と言いつつ、僕の方を向いたので、僕は、隣のオッサンに、頭を下げて、自己紹介をした。


「レンと言います。よろしくお願いします」


「ワシはバッファだ。おお、坊主、よろしくな」


 詳しい話は後じゃな、と、了承してくれたようだ。


「さっきの質問じゃが、このキャラバン隊に便乗させてもらったんじゃよ。王都に注文の荷を運んで行った帰りでな。ついでと言っちゃなんだが、色々と買い込んできたんで、安全第一じゃ。」


 はは、持ちつ持たれつじゃよ。と、オッサンは、気さくに笑った。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る