異世界サバイバルセットでダンジョン無双。精霊樹復活に貢献します。

辛島

第1章:異世界転移編

第1話 ダンジョンシーカー

 地球にダンジョンが出来て10年。その当時は、世界中が混乱したけれど、今ではすでに日常となっていたりする。


 日本にも、各地にダンジョンが出来た。それは、山や森林、川や海岸といった自然に広がった場所に限らず、都会の一角、解体が進むビルの工事現場、倒産し放置されたパチンコ屋、公園の遊戯場や雑木林内などなど、様々な場所に出現したのだ。


 ダンジョンに巣くう魔物は、ダンジョン外にでる事はなく、魔物を倒すと、魔石を手に入れる事が出来、その魔石は再生可能エネルギーとして利用できる事が解ると、各国は、こぞってダンジョン探索を行うようになった。


 ダンジョンでは魔石だけでなく、傷や病気を癒す貴重なアイテム等をドロップしたり、また、稀に宝箱と呼ばれる箱から、高性能の武器や防具、後発的に付与できる様々な魔法やスキルを覚える事が出来る魔法書やスキルオーブと呼ばれる物等までも手に入ったりするのだ。


 そんなお宝の山を、見逃すはずはないのだ。各国は、平和利用だけでなく、軍事利用の研究も始めたのだ。



 出現当時は、危険だとして制限されていたダンジョン探索も、軍による探索だけでは、手に負えない物となり、今では門戸も広がり、適正があると判断された者は、ある程度の教習を受けた後、試験に合格すると認定を与えられ、探索者(シーカー)として認められるようになっていた。


 運転免許のように、学校や教習所ができ、人気の職業の一つになっていたりするのだ。ダンジョンの管理及び免許取得更新等は、国から委託を受けた組織でJDSA(ジャパンダンジョンシーカー協会)が行っている。


 新田 蓮(あらた れん)も、シーカー免許を取得した一人である。


 高校を出てから、別にやりたい事もなく、他人との関わりが苦手だった事で会社勤めもキツそうだと判断、高校在学中からシーカー免許教習所に通い、卒業と同時にシーカーデビューをする。そして、浅い階層で、低級の魔物を狩って、安全第一で日々の糧を細々得ては、わずかな収入ではあるが、のんびり気楽に生きる生活を送っていた。



 蓮が一人住むアパートの近くの公園には、ある程度の深さの、中、低級者向けダンジョンがある。そのダンジョンの入口を囲うように頑丈な塀と建物がJDSAの出張所になっており、また様々な施設が併設されていた。


 建物の中に入ると、まず総合受付案内所があり、その奥には、入出受付、各種手続き、買取受付、武器防具レンタル受付のカウンター等があり、上部には数字を示すモニターボードが並んでいて、まるで役所のような作りとなっており、そこには多くのシーカー達でごった返している。


 その区画の奥には、男女別ロッカー及びシャワー室があり、コインランドリーまでもが設置されている。また、JDSAの建物の周りには、探索グッズ店、武具修理店のようなダンジョン関連の店やコンビニ、居酒屋など数多くの店が立ち並んで、まるでその一画はダンジョン街となっていたりするのだ。



 蓮は、今日も今日とて、ダンジョンに潜っている。


 蓮の装備は、魔法耐性がほとんど無いバイク用の安価な革のジャケットにパンツ、グローブにブーツだ。探索者用は高くて手が出ないからなのだ。水や食料等の荷物はリュックサックに入れ、魔石や応急手当用の薬をウェストポーチに入れ、腰にサバイバル用ナイフ、手には長めの鉈を持っての探索だ。


 この鉈、通販で7000円ほどで買った短剣ほどの長さの丈夫な鉈で、かなりお気に入りなのだ。魔物狩りにも使えるが、雑草の始末やもちろん薪も割れる優れモノなのだ。


 いつも通り地下1階~2階をウロウロとしている蓮。他のシーカー達は、パーティを組んで高価なお宝を狙って深い階層に潜っているので、1,2階は、昨日今日シーカーになったばかりの者しかおらず、空いているので、獲物の奪い合いもなく、人間同士の争いはあまりない事で、ある意味平和そのものだ。


 出てくる魔物は、低級のスライムやコボルト、ゴブリン等で、この魔石は一個500円~1500円程度で買い取って貰える。魔石以外をドロップする事はほとんど無いので、魔物を10匹前後狩れば、一日の稼ぎは1万円ほどで、多い時で2万円ほどとなる。命をかけた仕事にして、その稼ぎはどうなの?という感じではあるが、蓮はそれで満足なのだ。


 昨日、ゴブリンを探して2階層をウロウロしてたら、ゴブリンの上位種のはぐれホブゴブリンと遭遇した。ホブゴブリンが1体で出てくるのは、とても珍しく、普段はゴブリンを数体引き連れて出てくる。そんな時は、逃げる事に決めている。


 だが、その時は一体だった。これはラッキーだ。鉈を構え、ホブゴブリンに突撃した。


 蓮はシーカーになって半年。コツコツ小物を狩り続け、やっとレベルが2に上がったばかりなのだ。同じ時期にシーカーデビューした連中は、とうにレベル5以上になっており、中にはすでに魔法やスキルを覚えた奴もいたりする。


 低能シーカーと周りに馬鹿にされているのだが、周りがどう言おうとそんな事気にしない。自分が満足できればそれでいいと思うマイペースな人間なのだ。


 レベル2になった事で、ホブゴブリンを難なく討伐できた。ホブゴブリンの魔石は3000円ほどで買い取って貰えるのだ。その上、今回なんとアイテムの<毒消し>をドロップした。二点で合計5000円だ。


 昨日は、なんといつもより二倍ほどの3万円もの収入となり、ちょっとホクホクだったのだ。


 なので、久しぶりに贅沢をして、帰りにスーパーで香辛料を色々買って、その上にある100円ショップにも行き、ダンジョンで野営に必修なアイテムがないかと物色。新しい網やバーベキュー串、スモーク用ウッド等、なんだかんだと買い込み、幸せだと思う蓮だったのだ。



「よ~し、今日も頑張るぞ!」と、自分自身に気合をいれて、ダンジョンの扉をくぐるのであった。

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