第2話 姉さん、私の心配は?

「しくじったわ……もう14時じゃない。配信寝坊した」

 目が覚めるとお仕事(趣味)の時間はとっくに終わっていた。

「まあいっか。どうせぐだぐだゲーム実況するだけだし。見てる人も数人だったし……あ、コメントついてる。『3時間遅刻とか最低です。ファン辞めます』ですって? けっ、遅刻も許せないようなファンならこっちから願い下げよ! はい、ブロック~、ポチ~」

 はい、今日の仕事終了。

 パソコンの電源を落とす。

「はぁ~引きこもって稼ぐって言っても楽な道じゃないわねぇ。これなら普通に学校に行って勉強して普通の人生を送るほうが楽――はっ!?」

 私は頭をかきむしる。

「ダメダメ! 弱気になるな私! 私は社会に出ない! 狭い世界で私を認めてくれる人とだけ交流をして生きていくの! 背が小さいとか、お人形さんみたいとか外見ばかり見てくる愚か者との交流なんて反吐が出るわ!!」

 パソコンの電源を再び付けた。

「私にはネットだけあればいい。配信していれば生きていくくらいのお金はそのうち手に入るわ。それに、いざとなればユウコが私の面倒を見てくれるんだから!!」

「見ませんが?」

 あら? 幻聴かしら? 背後からユウコの声が。

 振り返ると部屋の扉が開いていた。

「!? い、いつからそこにいたのよ!!」

「姉さんがパソコンつけてコメントに暴言吐きだしたあたりからです。ハア、ハア……」

「あれ……あんたなんか顔赤くない? それにこの時間は学校なんじゃ」

「ハア、ハア、フウ……顔が赤いのがわかるのに、早退だとは考えないんですか?」

「え? うそでしょ? 元気だけが取り柄のユウコが? 雪の日に乾布摩擦しても風邪ひかないし、真冬の川に飛び込んでもぴんぴんしていたあなたが? 小中高とここまで無遅刻無欠席のあなたが早退?」

「ちなみに、早退は皆勤賞には何の影響もないと先生に確認をとりました。だから、帰ってきたのです……なぜ、部屋の隅に逃げるのですか?」

「え、だって、変な病気かもしれないし……」

 うつされたくない!

「失礼な姉さんですね。ハア、ただの風邪だって、保健の先生が言ってました。疲れがたまっているのかもしれないって」

「そうね、あんた3年前から海外出張中の父さんと母さんの代わりにずっと家事してきたものね。私が全然家事しないから」

「自覚があるのはいいことです……。姉さん家にいるんですからたまには家事を手伝ってください。碌なお嫁さんになれませんよ?」

「お嫁さんとかなりたくないし~」

「このダメ姉……ハア、ハア、……あ、すみません姉さん。ちょっともうやばいみたいです……」

「え? ちょ、そんな扉の入り口で倒れられると困るんですけど!? 扉閉められないじゃない」

「きちく、あね……」

「え? 何? なんて言ったの? もしもーし? あ、だめねこれ。完全に気を失って……ん? あれ!? 今日の夕飯どうすれば、ね、ねえ起きてユウコ!! 私料理できないんだけど!?」

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