第11話エピローグ


 白と黒のツートンカラーの車が三台来た。けたたましいサイレンの音、パトカーだ。

 蓮の目が鋭くなった。

 公平は瓦礫の山から降りると、一番の先輩である巴が引き続き作業をすることになった。

「いやぁいやぁ、さすがは超能力集団の方々ですね、逮捕、おめでとうございます。助かりましたわ」

 天然パーマのしおれたモヤシのような男が、春用のよれたコートからタバコを出す。

 巴は気丈に説明をしていたが、公平はどうしても我慢ならず。

 刑事の胸ぐらを掴んだ。

「な、なになに」

「警察官が逮捕されたんですよ」

「それは、こちらとしても憤ってますよ」

 まるで政治家のような答弁に、蓮が駆け寄る。公平は手で制した。暴力は何も生まない。殴りたいけど、この刑事を殴っても女子高生は浮かばれない。報われない。

「しっかし、あの男もわざわざ功徳市でやらなくても他の管轄でやればよいものを」

「誰が犯人だとかどうでもいい。問題は『今』霊体が保護を必要としているという事実だけです」

「……鬼ごっこだけしていればあんたらはいいんだよ」

 公平の手をほどくと口を歪めてそう言い放った。

「現実は、自分の身を大切にするしかないんだ。他人のために何を息巻いてる」

「他人の気持ちを考えすぎて自分を犠牲にしてると心を病むだとか。自分を犠牲にしてまで誰かを幸せになんてしなくていいとか。みんな他人に優しすぎるんだとか。まずは自分を大切にとか。よく耳にするけどさ、『他人の事を蔑ろにする自分なんて好きになれないし大切にできない』んだよ。違うかよ」

 珍しく不動公平は怒りに身を委ねていた。

 刑事は面食らったのか少し後ずさりして、タバコを携帯灰皿にもみ消し鑑識と合流していった。

 自他共に成長する道を模索するのが人間。改めて、母の教訓を思い出し噛み締めた。

「言うね〜公平〜」

「あんたもなかなかよ」

「すごいですその、すごい」

 帰りましょうと、ひとりごちて。不動公平は改めて瓦礫の山や半壊、全損の町並みを観る。

 早く復興して欲しい。

 夜風が涼しく通り過ぎた。

 新年度は始まったばかりである。

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