第5話
「俺は視えないので、触るとかよく分かりません。けど、判らないからこそ考えてみたんです。蓮には生きてるかもと指摘されてハッとしたけれど。やっぱり最悪のケースを想定していないとと。そこで、単に亡くなったわけじゃないのなら、殺された。殺したのは誰なのか? そこは警察の資料にあったストーカーの被害届と照らし合わせて殺されたと断定する。しかし、しかしですよ? もし犯人のストーカーも霊能力があるのなら殺した後に霊体を監禁するのではと、そう思って」
いきなり蓮が両手をガッと握ってきた。
「僕はその仮説に乗った」
堂本姉弟は俯いて何かを考えているようだ。
「で、でもやっぱり突飛ですよね……霊体目的のストーカー事案なんて」
「いえ、ありえるわ」
「え?」
「実は、新入りのあんたは知らないでしょうけど。霊体を保護した後に奪われる事件がたびたびあったのよ」
「霊体を奪われる?」
「霊体なんて供養する以外、どうするのか分かんない。でも
「もしかして、昇魂寺に誰もいなかったのは」
「通常公務もしつつ、別に対策本部に行ってるはずよ」
また四人は押し黙った。
その沈黙を
「とりあえず、その子を捜そうよ」
「ハァ、仕方ないわね」
「いいの? 巴っち」
「あんたら二人じゃ現場まで永久に辿り着けないでしょ」
「さすが、いヌ」
公平は慌てて蓮の口を塞いだ。
「なに?」
「な、なんでもないです。な、蓮」
「ふがふご」
「まぁ、いいわ。巽、霊波の方角は?」
「西南の方角だよ」
功徳市に唯一あった大学が潰れて、学生寮の利用者が居なくなり、代わりに格安のアパートが軒を連ねる地区だった。
「犯人は学生でしょうか?」
「
「やっぱり警察にも協力を」
「資料渡されたでしょ? それが彼らの協力よ」
「仲悪いんですか? 警察と」
「向こうが勝手に敵視してるだけよ」
「敵視って」
「心霊庁が出来る前は、霊が視える捜査員を使うって話があったらしいしね。心霊庁の職員なんて冷遇されてるわよ。同じ公僕なのに」
そう言って彼女は腕を組んで足の爪先をトントンとリズムを刻みだした。苛立ってるらしい。
「方角が分かったから後はあたしが探してあげる」
「もし、か弱いあたしが何かあったら白すけ。あんたがフォローに入りなさい」
「へいへい」
二人の掛け合いについフッと笑みをこぼしてしまった。
「なによ」
睨まれた公平は、目線を逸らす。
この二人の方が良いコンビなんじゃないか? 何で俺と蓮は組まされたんだろう。
ねえ、ねえってば。巴の呼びかけにハッとする。
「あくまであんたの仮説をもとに捜索するのよ。しっかりなさい」
「は、はい。すみません」
「しかし、霊体にストーキングなんてマジでありえないわ」
「許せませんね」
行くわよ。
巴を先頭に女子高生の霊体保護活動が始まった。
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