第14話 魔剣士が異常合成獣に出会ったら
「はぁっ!!」
噛みついてきた魔物を俺は一刀両断し、すぐにその場を離れる。その瞬間さっきまでいたところにまた別の魔物が叩きつけてきた。
一層──果たしてどれほどあるのかわからないので俺が仮にそう呼んでいるここでは、早速
「……マジかよ」
人間とウルフの合成獣が出てきたのだ。
上半身が人のそれだが下半身がウルフになっている。速さはウルフの四足によって生み出され、器用さは人間と同等で片手剣と盾を上手く扱っていた。
今まで生きてきた中で見たことのない
「真空斬!」
「ガアアアア!?」
しかし、人間相手だったらかなりやりやすい。離れたところから真空の刃を放ち、その
複数の魔物を相手取る時大事なのはヒットアンドアウェイを意識することだ。無闇に深追いしたら最後、一瞬の隙を複数の魔物に狙われ、死んでしまう。
特に
「っ!?クソがッ!」
奥から更に
魔術を使うか……?いや、魔術は身体強化以外使ってこなかったから、今使ったとて果たして前のように使えるのだろうか?その不安が魔術という選択肢を選ぼうとする俺を縛ってくる。
「……いや」
ここは刀と身体強化だけで戦おう。こんな長期戦は前に魔王軍との大規模激突が起こった時以来だ。
さっきの紫電一閃がもう一度使えたら……いや、あの感覚をもう忘れてしまっている以上、今無理にやろうとすればすぐに魔力が枯渇する。それは今の俺には致命的だ。
「ふっ!」
「ギャッ!?」
今は多種多様な組み合わせの
体力は問題ない。さっきのボスの
しかし終わりの見えない戦いに俺の精神はすり減るばかりだ。
「っ!?まだ増えるのかよ!?」
そして八体目を殺し、後一体となったところで更に
「一層でこれかよ……ハハッ、赤い石板が都市伝説だった理由が、今ならわかるぜ」
赤い石板の噂だけが流れていた理由がよく分かった。冒険者は未知を解明したいという欲望に抗えないものたちが強くなっていく傾向にある。その過程でこの赤い石板が現れたりもしたら──奴らは進んで触れるだろう。
そして、その欲望が満たされたその瞬間、代償として命を捧げるのだ。
「……っ、俺はそんな奴らとは違うっ……!はあああああ!!!!」
俺はすり減った精神を無理矢理立て直して、一気に二体の
「おおおおお!!!!」
「!?」
俺の裂帛の気合に気圧された三体の
「抜刀、居合斬りっっ!!!」
「ガアアア!!」
まずは近くにいた、ゴブリンとオークの
「はあっ!!」
「グアアアア!!!」
返し刀で今度はガーゴイルとバジリスクの
「真空斬っ!!」
そして透明な刃を放ち、ガーゴイルの部分とバジリスクの部分の境目を切断した。
「ようやく、これで一対一だぜ」
「グルルルル……」
直ぐに二体の仲間がやられたせいか、さっき以上の警戒を解くことをしなかった最後の
「──仕掛けるっ!」
俺は睨み合いの中少しの動きでもしっかり対応してくる
「グルッ!?」
「はああああ!!」
そしてグリフォンと獅子の
ガキン!!
「ちぃっ!」
「グルァァァアアア!!!!」
「っ!?まずいっ!?」
それに驚いて一瞬でも体の動きを止めたのがよくなかったのだろう、
「っっっ!!!」
なんとか自分の体と迫ってきた爪の間に刀を滑り込ませ防いだが、勢いは殺せずにダンジョンの壁まで吹き飛んでしまった。
「っ!?」
「ガアアアア!!」
歯を食いしばり体から出て行こうとする空気を無理矢理体の中に押し込んで、体全体に力を込める。そして壁にめり込んだ体を起こし、その場を離れる。
その直後にさっきまで俺がいた場所に奴の爪が突き刺さった。
「真空斬!」
「グルアアア!!」
「やっぱ無理かっ!?」
渾身の真空斬を弾かれ驚くも、さっきとは違い体を硬直させることはなかった。すぐに思考を切り替え今度は足を狙うことに。
だが──
ガキンッ!!
「なっ!?」
それも鉄のように固い皮膚によって阻まれてしまった。しかしそこで俺は違和感を覚えた。
(おかしい、こいつは新緑のダンジョン第十層ボスの
そこで目を強化し、よく凝らしてようやく気づいた。
「っ!?こいつ、纏ってやがる……!」
なんと、自分と同じように体を魔力で強化していたのだ。それは人間にしかできない芸当のはずだ。だというのに、目の前の魔物はそれを成してしまった。
「……っ」
道理で普通の
「首に人間の頭が埋まってる……チッ、そういう事かよ」
つまり、この魔物が今やってるそれはその顔──正確にはそいつの脳でやっているってことか。
「……斬るか、あの首纏めて」
俺は静かに、刀に魔力を流し始めた。
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