ネイルサロンTSの日常

中島しのぶ

第1話 プロローグ

 〜〜〜 プロローグ 〜〜〜


 店長、店舗バックヤードの店長用PCで売上レポートをにらみつつ「今月の売上ノルマがあと少しで達成できるんだけどな・・・」大きくため息をつく。


 そこへチーフ・・・「あ、それなら店長をご贔屓にしてるあの社長を呼べばいいじゃないですか? あの方なら、いっちばぁ〜ん高いデザインでハンドもフットも両方オーダー入れてくれますよ、きっと」


「ん〜、そうだね・・・前回施術から・・・3週間だから、そろそろ連絡してみるか・・・」

 該当者を検索してカルテを表示し、電話をかける・・・


「あ、もしもし? 社長? ご無沙汰してます。 ネイルその後いかかですか? 少し早いですけど春の新作も出てきましたのでいかがかな〜と思いまして・・・」


「あら、店長さん? お久しぶり。 そうね、春の新色かぁ・・・まだ少し肌寒いけど、いいわね〜。 明日午前中なら時間あいてるけど、席は空いてる? あ、フット席も空いてるの? じゃ、フットもお願いししちゃおうかしら」


「はい、11時からでしたら、ハンドもフットも連続でご用意できますよ!」


「じゃ、明日11時に席空けておいてね〜。 新色で高いの、楽しみにしてるわよ」


「はい、喜んで。 お待ちしております!」


「おーい、チーフ! 明日の11時にハンド・フット両方、それも一番高いのオーダーしてくれたぞ!」

「店長、やりましたね! 明日は頑張らなくっちゃですね!」


「おーい、あんまり気合い入れないでくれよなー」


「だって、店長って・・・ねぇ(笑)」


「・・・」


 〜〜〜 翌日10時 〜〜〜


「店長、あと1時間でご指名のお客様のご来店ですよ〜。 早く用意して下さい!」


「う〜ん、わかってるけど、今日はどの服に・・・」


「なに言ってるんですか。 店長ってば、歳の割に可愛い服似合うじゃないですか! おめかししなくっちゃですね! うふふ、どんな服がいいかな〜わたしが選んであげますね〜♥」


「お〜い・・・」


「えー、だってわたしのおかげですよ〜予約とれたのは! だからわたしがコーデしてみせますってば!」


「う〜そうだな・・・」


 ジェルネイルを取り出す。

(よし、やるか・・・まずは左親指に・・・今日は春の新作、薄いピンクのミラーネイルを・・・と)


 自分の左親指に塗り始める・・・すると・・・突然の激痛、めまい・・・

(うっ、骨盤が開く・・・股間も・・・痛っ・・・がまんがまん・・・)

 左親指から順に人差し指から小指までネルを塗っていく・・・

(むぁっ、む、胸も痛い・・・)


 そう、店長は女子化体質(OTMS)だった。

 しかもネイルが女子化のトリガーだ。


「あ、お〜い、チーフ・・・右手塗ってくれ・・・」息も絶え絶え、ゲル状の樹脂を硬化させるためLEDライトに左手を入れながら、店舗に戻って施術しているチーフを呼ぶ。


「はーい、店長。 今いきまーす。 ぴーちゃん、ちょっと代わってね」


「はーい。 ではお客様、オフ(ネイルを落とすこと)始めますので私が担当しますね〜」


「店長おまたせしました〜あ〜らもう可愛くなっちゃって♥・・・今日のコーデは・・・ん〜定番の紺ブレに絶対領域で行ってみますね!」


「ふぇぇ〜いくら見た目がJKっぽくてもそれは・・・マンネリじゃ・・・」


「え〜だって店長JKっぽいの好きじゃん(笑)」


「そ、それはそうだけど・・・」


「いいからいいから・・・そうだ、今日はちょっと高めのポニテにしましょうね♥」


 こうして完全無欠のポニテ絶対領域になった店長は、ご贔屓の社長を無事迎える準備が整った。


 〜〜〜 お客様ご来店 〜〜〜


(カランカラン)

「あ、カネコ様いらっしゃいませ〜」


「あ〜ら店長、きょうはJKなのね♥ かわぃぃわねぇ〜」


「は、はい。 チーフにむりやり・・・」


「何言ってんの、あなたがJK好きなの、わたし知ってんだから」


「うっ・・・」(ぐうの音も出ん)


「今日は新作のハンドとフット、店長がやってくれるんでしょ?」


「もちろんですよ〜、ほらハンドのサンプルはわたしのを見てくださいね、綺麗でしょ?」


「ちょっと若すぎない? ま、たまにはいいかしらね」


「そうですよ〜社長、お綺麗だしお若いんですから〜」


「じゃ、お願いしようかしら・・・」


 こうして今月ノルマ達成も見えてきた?

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