EMERGE

水野匡

Prologue

1.

 僕は川辺に佇んでいた。川の水は燃え盛る炎の水が流れていて、川底は明るくて見えない。

 川の対岸には姉さんが手招きしていた。

「ガブリエルはこっちに来ないの?」

「僕は行けないよ、姉さん」

 このまま進んだらたとえ足がつく深さだとしても燃えてしまう。辿り着く前に僕がいなくなる。

「そうね」

 姉さんはいう。

 その顔は、身体は、焼け焦げた白骨へと変わっていた。

「あなたはいつでも私のもとに来なかったもの」

 目が覚める。

 カーテンの隙間から射す陽光が目を覆っていた。

 夢を見て起きたのはいつぶりだろうか。覚えていない。姉が死んだとき以来だろうか。

 いつも見る夢のうちのひとつ。実際には姉の死に際など立ち会えていないというのに、あの人の死を切望している僕の願望が生み出している夢だ。

 ちかちかして白熱する視界を覆い隠して、起き上がる。

 仕事に行かなくてはならない。

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