第10話 秋終わり馬肥ゆ―2
ダタール・ハリ開催の一週間前の晩餐会。
そこで、ラタジーレはラクスから『名馬を見分けられる』と聞き、自身の第三騎馬隊で今年購入する馬の選定を頼んだ。
その場では、酔っ払い上機嫌で『選定』を引き受けたラクスだったが、酔いが
エスター達<特能鑑定士>は元々引き受ける気がなく、ラタジーレが頼んでも門前払い。
リサン達、通常鑑定士はすでに退職し、相馬眼を持つ者は第一、第二騎馬隊に押さえられている。
このままでは、『今年も、昨年と同じく良い馬が手に入らない』と考えたラタジーレは
そこにリサンが現れた。『思いがけず大物を捕まえた』と思ったかはわからないが。この笑顔である『助かった』ぐらいには思っているだろう。
「いきなりで申し訳ないがリサン殿、我々を助けてもらえないだろうか? 是非とも馬の選定を手伝ってもらいたい!」
頭を下げて頼むラタジーレ。
「馬の選定ですか……まあ仕方ないですね、これも縁でしょう。ええと、第三騎馬隊なら、欲しいのは持久力と機動力の高い馬ですね?」
レスタはそう答えると、賑わいの多い中央部から離、外周部に向かって歩きだした。
ラタジーレは欲しい馬を『ピタリ』と当てられて驚きながら、慌ててリサンの後を追う。
外周部を歩くリサンとラタジーレ。
「あの? 競売にかけられる予定の馬を見るんじゃないのですか?」
当然、優良な馬が多く出されるであろう競売所近くの馬に、全く見向きもしないリサンに驚き、声をかけるラタジーレ。それにリサンは簡潔に答えた。
「競売の馬は、体格が大きく足の長い速く走る馬ばかり。ラタジーレ殿の第三騎馬隊は、偵察と後方支援が主な任務だろう? 必要な持久力と機動力を持った馬は、あそこにいないよ」
そう言ってからリサンは、二時間『スィ~』と川を流れるように馬を見て回る。
そして、おもむろに携帯用の文箱を取り出し、紙に簡単な会場の地図を書いた。
そして、その横に記入する形で、馬売り人の名前と馬の毛色特徴をズラリと書いてラタジーレに差し出した。
「これが希望に合った馬のリストだよ。二百頭ほど選んでおいた。一応能力が高い順に書いておいたから、上から買っていくことをオススメする。もちろん最後の馬も良馬だから安心して欲しい」
「えっ! 二百頭も!? こんな短い時間で選んだのですか?」
驚きながら馬のリストを受け取るラタジーレ。
「うん、多分間違いは無いと思うけど、信じられないならリストは無視していいよ」
「いえ! リサン殿の事は全く疑っておりません。早速今から部下を呼び手分けして馬を購入して参ります! ありがとうございました!」
そう言ってラタジーレは、走っていった。
その姿を見送り『ン~』と伸びをしたリサン。
「さて、大体見たな。次は競売が終わる五日後に、もう一度来ようか」
リサンはそうつぶやき、会場を後にしたのだった。
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