BlueStar

ふみつき やか

Episode.0

 春。桜咲き乱れ、花びらが暖かい風に乗り、踊り舞う季節。

 花びらたちの舞を肌で感じながらその舞台の真ん中を杖をついて歩く少年。桜に反射した淡い太陽光を吸収して焦げ茶色に光る髪をふわりふわりと揺らす。一年中卯の花を宿す彼の瞳は目の前の空気ではなく、その奥の虚空を見つめているようで大変美しかった。


 その姿はまるで人形。誰もが彼の姿に見とれるほどだった。


 「智紘。」


 誰かの呼ぶ声に人形の少年は振り返り、満面の笑みを浮かべた。その瞬間人形の目に少しだけ人間の光が灯ったように見えた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る