第5話 お初デス、戦闘




 さーて、やってきました街の東にあるなんたら平原っ!


 βのテスターの話だと初心者向けは平原って言ってたんだけど、見た感じ草原!ってくらいわっさり草生えてるなぁ……


 まぁその程度些細な違いだろう、βから変更とかもあったりするだろうし。


 さーて、そんなことは置いといていざ戦闘っ! 俺の養分になるヤツはどこだあああああっ!


 それでは草原に……


「突っ撃いいいぃ…ぃ……いや、この草背ぇ高すぎない?」


 俺の顔くらいの高さまであるじゃんかこの草むら。


 初戦闘のステージにしちゃ随分と難易度高くね? 変更されてなければここに出るのウサギやスライムとかの、ここじゃ探しにくい小さめのモンスターのはずなんだけどなぁ……


 あっ、混雑が想定されてる場所だろうし、草むらの中は難易度が高くなる代わりにインスタンスエリアになってて、獲物の取り合いが人知れず起こらないようにされてたりするのかな?


 んー、考えたところで草が消えるワケでも無し、とっつげきいいっ!!


 ガッサガッサ草を掻き分け…

──ドムッ!


 てぇ……えっ?


──ザァァァァ......


「えっ? は??」


 ん? んん?? あれぇ? なんでまた街中の噴水前に??


 もしかして異次元の扉開いちゃいました…………?


 いや、んなわけないな。序盤どころか最初の街近くにそんな場所…てか街の噴水広場行きとか意味わからんわ。


 なら…えっ、もしかして……?


「ログ表示!」


[正体不明の相手からの攻撃。

 プレイヤー:ランのHPが全損。

 蘇生手段無し、リスポーンポイントへ即時転送します。

 デスペナルティは規定のレベル到達前によりありません。]


 …………いつの間にか死んどるやんけ。


 えぇ……序盤の雑魚相手に一撃死? もしかして当たりどころが悪かった……?

 このゲームリアルに作り込んでるからなぁ、雑魚モブでも油断しちゃダメってことだな。


 幸いデスペナは無いみたいだし……リベンジじゃああああああっ!!




 ダッシュで帰ってきたぜっなんちゃら平原っ!


 待ってろや謎の生物X! てめぇにこの初期装備、メリケンをぶち込…

──ドゴッ!……ザァァァァ......


「……………………」




 野郎ぶっ殺…

──グニッ!……ザァァァァ......




 ざっけんなゴ…

──ゴギッ!……ザァァァァ......




 

──パンッ!……ザァァァァ......


──ガッ!……ザァァァァ......


──ジュッ!……ザァァァァ......


──トッ!……ザァァァァ......


──ドゴッ!……ザァァァァ......


──バシッ!……ザァァァァ......




「……………………すぅぅぅ…………ふぉぉぉぉおおおおおおおおおおおっ!!」


 完っぺきにキレちまったぜ……


 名も知らぬクソモブ風情が、こっこっ…この俺を十回っ! 十回も連続ワンキルしてくさりやがってよぉおおおっ!!




 十一度戻ってきたぜっなんちゃら平原っ!!


 だがしかぁぁぁしっ! 今度の俺は……ひと味違うぜ?


 これまでは草を分け入ってすぐ…というか一歩でぶち転がされてたワケだが、それは裏を返せば草の近くに潜んでいると言っているという様なもの。


 つまり……


「ウォータっ! ウォータっ!! ウォータっ!!! ウォータあああああっ!!!!」


 水魔法で水祭り開幕じゃあああああああいっ!!


 ドッパンドッパン地面から水が吹き上がり、草や土も巻き上げられて水と共に降り注いでいるけど知ったことかっ!


 どこだっ?! 俺の敵はどこだあっ!!


「ウォータっ! ウォータっ! ウォ…「キャインッ?!」……見ぃぃぃぃつぅぅけぇぇぇたぁぁあっ!!」


 ふっ…ふふふふっ……これまで散々虚仮にしてくれたお礼をしてやらねぇとなぁ?


 鳴き声の位置はいつも突っ込んでいく草むらに入って右手五、六歩行った辺りか。


「ウォータっ!「キャウンッ!」 ウォータっ!「ギャウッ!?」」


 このゲームの魔法に溜め時間もクールタイムも有って無いようなもんで助かったわ、MP多めに消費するだけで済むんだもん。

 お陰で推定犬畜生を逃がすことなく、魔法を挟みつつ近づくことが出来るってワケだしな。


 魔法発動地点に近寄ると草が吹き飛び、剥き出しの地面で魔法の水に打ち付けられて怯み、身動きの取れなくなった犬っコロがいた。

 動くことは出来なくてもまだまだ元気そうじゃねぇか? 水に打ち付けられながらもこっちを睨み付けてやがるぜ。

 

 だがなぁ……


「ウォータっ!「キャインッ!」からのぉっ…メリケン祭りじゃあああああっ!!」


 正体割れればこっちのもんじゃボケぇえええっ! ボッコボコにしてやっかんなぁ!!


「ふふっ……ウォータ! ははっ……ウォータ!」


 馬乗りになってメリケンで殴り付ける合間にウォータを時折挟み、怯ませ動きを封じて五分ほど。


「キャ…ウン……」


 力無く鳴き声をあげてぐったり横たわり、粒子となって散っていく犬畜生の姿があった。


「ふっ…ふははははっ! 勝ったっ!! 俺の勝…」

──ドゴッ!……ザァァァァ......


「ち…………………………………………にぎゃあああぁああああああぁあああああああああああああああっ!!!!」



 この後、日が落ちるまで犬狩リスポーンし続けた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る