第4話 始まりの街アルケイディア



「ああああああああああああ~~っ!」


 なにこれっ!? なぜこれっ?! どうしてこの演出っ!!


 身体が浮き上がったと思ったらそのまま上へと加速! 雲を突き抜けて雲海を見下ろし急落下っ! しかも頭は下っ!!


 そして現在、俺は徐々に近づく街を眼下に眺めている……だけだったらよかったなあっ!!


 もう間もなく初期スポーン地点でお馴染みの噴水広場へと降下中! そろそろ周囲の建物の高さ付近まで落下するというのに減速する気配無しっ!

 おまけに姿勢制御なんて出来ないっ!……やれたとて、な速度だけどさ。


「いぎゃあああああああああああぁあああああああっ!?」


 ぶつかるっ! 地面にぶつかって赤い染みになるっ!!


 ログイン早々即デスるクソゲーがあるんですよおおおおおぉ…おっ? おおおおぉ…………


 よっ、良かった……地面と激突寸前のギリギリ、鼻が擦れる直前にまたもやフワリと急停止。

 そのまま頭が上になるようにクルリと回転してのトン…と軽やかに着地。


「……………っふはぁぁぁ……」


 ……なんてしたところで立っていられるワケねぇだろっ!! 腰砕けだよっ!! 心臓バックバクだってのっっ!!!

 もう地面と仲良しだよっマブダチだよっ! 二度とお前と離れないからなっ!!


 はあぁぁ……地面って素晴らしいよね。だって、殺しに来ることがないんだもん。さすが母なる大地! 石畳だけど最高っ!


 それにしてもこのクソゲー、涙だけじゃなくて鼻水まで再現されてるのか……余計なことを。ズズッ!


 つーかサービス開始直後とはいえ、こんな転送の仕方じゃクレームの…あら…し……?


 えっ、ちょっと待って、俺の後に送られたであろう唐突に現れる人たちがちらほらいるけど……

 着いて早々に辺り見回したり、そのまま何事もなくスタスタ歩いていったり……あ、えっ? 空から落ちてるのや、へたりこんで地面に座ってるの…………俺だけ?


 なんでっ!? あんな紐無しバンジーどころかパラ無しスカイダイビングして平然……もしかして、街への転送にもレア演出……あったりします?

 というか、レア以上ガチャで態度変えたことへのサポートAIの報復だったり……?


 あの野郎……クレーム入れてサポートAIクビにしたろか? 出来るか知らんけど。


 てか、今さらだけど……めっちゃ注目浴びてるZE!!

 そりゃそうだっ! 絶叫しながら落下して、地面と同化寸前で止まって今じゃ地面の友だもんっ! 目立たないワケないじゃん!!

 降り立つまで見えてなかった可能性が無いとは言わないけど、あの演出は回り見る限り俺しか受けてないと思う。だって誰も泣いてないもん!


 アカン、涙と鼻水でぐちゃぐちゃになってると思うと恥ずかしくなってきたっ!


 急いでこの場から…ってアカーンっ!! こっ、腰ってか足に力が入らんやんけぇっ!

 ぐっ…くうっ! なっ、なんとか……足を立てて四つん這いまで持っていったけど……足がプルプルするぅっ!!


 あっあっ、見んといてっ! 生まれたての小鹿のようなウチを見んといてぇっ! ちょっ、こっちに近寄ってくんなよそこのねーちゃんっ! あっ、やめっ…


「あ、あの、大丈夫……? 手を貸そうか?」


 やめてぇ~…こんな情けない姿のウチをまじまじと見ないでぇ~……


「だっ、大丈夫……」


 はっ、早くたたな…ぐえっ! うっ、うぅ……焦りすぎて足から力が抜けたわ…………


 もう地面の一部としてここで寝てやろうかな?


「あっ、そんなところで倒れてちゃ危ないからこっちに座ろ?」


 oh……軽々と俺を持ち上げるなんて、なんたる怪力女……ってそういや今の俺、幼女ボディだったわ。

 男の時の身体の感覚でいたけど、見た目相応の重さなら女性でも持ち上げられるわな。なんせお子さまサイズだし。


 あっ、ボーッとしてる間に噴水の縁まで運ばれて座らされてら……

 とりあえずお礼…この姿の場合、子供っぽく振る舞った方がいいのかな? んー…まぁ、そういうロールプレイってことでいいか。実年齢言ったところで信じてもらえそうにないし。


「あのっ! ありがとうごさいます、おねーさんっ!」


「いいえ、どういたしまして。ところでどうして空から落ちてきたの?」


 うぐっ! やっぱり他の人たちにも見えてたのか……まぁ隠し立てするようなことでもないし話すか。


「キャラメイクが終わってAIさんが街に送ってくれるところで空に浮かび上がっていって、雲より高いところまで飛ばされてから街に落とされたです。

 地面スレスレまで下を向かされたまま止まることも身動きも出来なくて、死ぬほど怖かったです……」


「えぇ……なにその恐怖演出? 子供相手に……大人でもイヤだけど、とんでもない目にあったのね」


 あっ、普通に引かれた。つーかやっぱり他の人は別の演出なのか。


「おねーさんはどうやって街に着たです?」


「わたし? わたしはね、設定が終わったらパーっと光が飛んできて眩しくて目を閉じた間に街に降り立ってたわね。

 噴水とか回りの音で場所が変わったって感じて、目を開けたらここにいたってところね」


 ……うん、確定。予想通り全然違うね。


「あの演出は……ダメな気がします」


 なんで俺だけこんな目にあってんの? 俺が本物の幼女だったらトラウマもんだぞ??


「そっ、そうね。お姉さんも唐突に始まる紐もパラシュートもない自由落下はイヤだわ……」


 うん、よっぽどの物好きでもなければ予告無しのアレはイヤだろうとも。

 っと、そういやさっきより足に力が入るようになったし、そろそろ動けそうだな。


「ランはそろそろ行くです。助けてくれてありがとうですおねーさん」


「あっ…うん、別に気にしなくていいよー。それじゃ気を付けていってらっしゃい」


 軽く走ってからのぉ…振り返って手を振るっ! 幼女ムーブはこんな感じでどうだろうか?


 まぁ違ってようとロールプレイだし別にいいか。さーてっ!早速街の外にいってみるか!


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