第2話 キャラメイク1



 うむっ、さすが最新のヘッドセットっ! つーかAGOは旧型非対応の、新型ヘッドセットデバイス必須なんだけど……とにかく起動が早いっ!! 間に合った!


 さぁサクサク初期設定終わらせて…っとお? アバター作成サポートAIかな? 光の玉が人型に集まってきてるぞ。


 人型の光がおさまって、本を小脇に抱えた金髪の美形眼鏡の兄ちゃん……司書イメージ? とにかくファンタジーな世界にいそうな文官系の男がこちらに語りかけてきた。


「アルカディアゲートオンラインへようこ…おや? すまない来訪者よ、先に一つ確認させてもらうが君たちの世界では今日は平日だったと思うのだが……。君は学校に行っている年頃なのでは?」


 んっ? えっ、最近のAIってそんなこと確認してくるの??

 つーかせっかくのスタダがっ!


「創立記念日で休みですっ!」


 早よ早よっ! どうせ今から学校行ってもしゃーないんだからっ!

 んっ? なに小脇の本ぺらぺらめくってんだ?


「創立記念日……確認完了。現実世界で本日休校の学校は存在しませ──」


 はうあっ?!?! なんでそんなこと確認してんのっ!? つか調べられるのっ?!

 ってなんかマズそうっ!? えー…っそうだ!


「すいませんっ嘘つきましたっ! 本当は祖母が倒れたと聞いて学校休んで見舞いに行ったけど腰を痛めて起き上がれなくなっただけだったのでそそくさ帰ってスタダ決めに来ましたっ!! 調べられると思わず説明の短い適当なこと言ってごめんなさいっ!!」


 お願い見逃してっ! そして早よアバター作らせてっ!!


「……そうですか、了解しました。それではアバター作成に入ります。事前登録情報を参照しますか?」


「はいぃっ!」


 よっしゃポンコツAIの審査通り抜けたっ!


「それでは登録名ラン様のこちらの世界でのアバターを……失礼、エラーが発生して現在のラン様の姿に反映出来ませんでした。

 申し訳ないのですが、新たにアバターを作成する必要があります」


 なんでえええぇっ?! えっ、事前作成のデータ壊れたとか? 今日日そんなことあるのっ!?


 くっ、ええいっ! 問答しててもスタダが遅れるだけっ! は…よ……?


「えっ、ちょっと待ってAIさん。なにこのミニマム幼女? 俺のアバター作るんだよね?」


 俺の目の前にはサポートAIの他に、新たに現れた黒髪黒目の百四十センチも無さそうなちんちくりん幼女。

 いや可愛いけど、ロリコンに人気出そうだけど今幼女関係なくない?


 あっ、アバター作成に必要な別口のAIかなにか?

 なら早よ俺の素体出して、身長百七十くらいの凡庸な顔のあれ。


「? 現在のあなたの分身体……メイキング前の未変更のアバターですが?」


「は……え?」


 んん~…? はっは~ん、さてはこのAI……すこぶるポンコツだな?


 まったく、俺のどこを見てこの幼女…と……いや、なんか俺の手小さくね? てかさっきから声も違う…?


 う~ん…目の前の幼女アバターと手の大きさ同じくらいか……? いや待って、よくよく考えたらAIの兄ちゃんは見上げてんのに、幼女とは見下げることなく真正面。ちょうど同じくらいの高さに顔がある、やんけぇ…………


「あの、かっ鏡……出すこと、出来ます?」


「えっ? ええ、出来ますよ……。はい、どうぞ」


 あっその本の中に鏡仕込まれてるんだぁ~、さすがゲーム。なんでもありやね。


 …………さて、そろそろ現実を見ようか。ゲームの中だけど。


「なっ、何じゃこりゃああああああああああっ!!」


 えっ? 何これバグ? どっきり?


 もしかして寝起きに失踪していたちんちんと関係……ある?


 ……そういや、さっきカップ麺にお湯いれる時ポットがやたらと高かった?

 あの時は……給湯ボタン見えなかったな、配置はわかってるからさらっと流してお湯出したはず。


 俺……縮んでる?


 部屋からの移動もやたらと時間がかかった……。てかお湯いれたあとの待ち時間にトイレ行ったらパンツ穿いてなかったのは……移動中に脱げた? えっ、俺全裸でゲーム中っ!?


 うっはぁ~、一回起きて服着た…あっ、さすがにシャツは脱げてないか。ならばよしっ!


 つーかトイレは小でも座る派だからちんちん失踪してもさほど気にしなかったけど、座ったとき床に足が着いてなかったような……俺どんだけ縮んだの? あっ、目の前のアバターのままか。


 カップ麺もいつもならペロリなのに腹パンパンだったのはそのせいかぁ……


 はぁ~…マジか。俺、幼女になっちゃったかぁ~。

 事前登録のデータがエラーになったのもこの姿だからか…………



 まっ、遅延は出てもゲームには支障はないなっ!


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