楽園へ

バブみ道日丿宮組

お題:天国のドア 制限時間:15分

 アルバムをめくると、猫は写真に視線を向けてるようだった。

 もう亡くなるまで時間はおそらくない。そもそも本当に見えてるのかわからない。

 お腹が動いてる、瞬きしてる。それぐらいしか生きてるのを確認できない。

 食事はチューブで直接胃に送って、排泄は流れるまま。排泄されたものはほとんど消化されてない。流動食というのももしかするとあるかもしれないが、きちんと栄養を吸収してるようには思えなかった。

 毎日家族でリビングで過ごす猫を見守る。

 助けることはできない。代わってあげることもできない。

 寿命という限りある時間を今まで過ごしてきた。いつか私も同じように死ぬだろう。その時は誰が一緒にいてくれるだろうか。

 偉い人はいった。

 死ぬときは一人、と。

 眠るように死ねるのなら、私もそうであればいいと思うがこればかりはわからない。明日事故で死ぬかもわからないのだ。

 猫はどうだろうか。

 楽しい日々を過ごして、苦しまずに死ねるのだろうか。

 頭を撫でる。

 まだ温もりがある。この温もりがなくなるなんて信じられない。

 猫には天国のドアを通っていってほしい。

 私はいけないかもしれないけれど、せめてこの猫ぐらいは楽園に旅立ってほしいものだ。

 明日も学校、会社、家事があるため、それぞれ寝室に戻る。

 せめて見送りたいと思うが、外せない宿命を私たちは持ってる。

 

 また明日。

 

 そう言葉にして、眠りにつく。

 朝起きると、母はすぐに亡くなったことを教えてくれた。

 体温は冷たくなってた。

 あんなにももふもふしてて暖かったものが、もうここにはなかった。

 それが死ぬということなんだ。

 涙が溢れた。

 一緒に寝てあげればよかったかもしれない。

 そうすれば、少しでも私のことを覚えておいてくれたかもしれない。

 すごく身勝手な私だけど、許してほしい。

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楽園へ バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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