逃亡勇者は後進を育てたい
東赤月
プロローグ
「まだ捕まらぬのか!?」
玉座の間に宰相の声が響く。真夜中であるにもかかわらず、まるで昼間のように明るいその場所では、彼の歪んだ顔もはっきりと見えた。本来なら彼を諫める王も就寝中で不在だ。頭を下げた兵士たちの肩が震えた。
「我々も全力で各地を探しているのですが、今のところ目撃情報すら……」
「奴が目撃などされるわけがないだろう! 魔力の震源地を追え! どこかで強力な魔法が使われれば、必ずそこに奴はいる!」
「それも探っているのですが……」
「ええい、役立たずどもめ!」
宰相の持つ杖の石突が床を鳴らす。
「奴が逃げたのも、元はと言えばお前たちのせいであろう!? 助けを求められれば応じざるをえない奴をどうして取り逃がしたのだ!」
「それは、その、彼のスキルは、助けを呼ぶ側の気持ちの大きさが拘束力と比例しますので、拘束が弱かったと言いますか、その……」
「もう良い! お前たちも捜索に向かえ! 奴を連れて帰ってくるまで、戻ってくることは許さん!」
宰相の一喝に、兵士たちは大慌てで外に出て行った。
「くそ、あやつめ。とりたててやった恩を忘れおって……!」
苦々しい呟きは、広い空間へと散り、消えていった。
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