第8話 クエスチョン

 ──翌朝


「さくら遅刻するわよ!」


 母親の声で目が覚める。


「・・・ふわぁ」


 大きく欠伸をして体を起こす。


 ・・・・・・。


 それにしても変な夢を見たな・・・。

 くぼちゃんとかいう案内人が、未来を案内しに来ましたとか、ちんぷんかんぷんなことを言ってきた。

 年齢はありませんとか、うさぎ先輩と仲良くなれとか、思い出しても意味が分からないことばかりだった。


「・・・ん」


 ・・・あれ?

 夢ってこんな鮮明に覚えているものなの?

 たまに夢の内容を少しだけ覚えていることはあるけど、まるで本当にあった出来事のように覚えている。


 そういえば、くぼちゃんは夢じゃないって言ってたな・・・。

 仮に夢じゃなかったとしても、場所を聞いた時の私の中っていうのも謎すぎる。

 くぼちゃんは私に会ったことあるって言っていたけど、絶対会ってない気がする。小さい頃の記憶は曖昧だけど、あんな外人っぽい子と会話したことがあるなら覚えていてもおかしくない。


「さくら! 早く起きてご飯食べなさい!」


 母親に急かされたので考えるのをやめ、のそのそとベッドから出てリビングへ向かう。


「おはよ」


「寝坊なんて珍しいじゃない」


「うーん」


 あんまり寝坊はしないんだけど、夢のせいだなきっと。


「お母さん。私の小さい頃に、金髪で瞳が青い女の子の知り合いいた?」


「小さい頃っていつぐらいよ」


「うーん。幼稚園ぐらい?」


 くぼちゃんからは小さい頃としか聞いてないし、小学生の頃の記憶はまだ残っているので、可能性があるとしたら幼稚園時代かなと。

 さすがに赤ちゃんの時とかはないでしょ。知らんけど。


「そんな子いなかったわよ」


 やっぱそうだよねぇ。

 いるわけないよねぇ。


「その子がどうかしたの?」


「んー。いや、なんでもない」


 これ以上聞いても新しい情報は出ないだろうな。


「そんなことより時間大丈夫なの?」


 チラッと壁に掛かった時計を見る。

 ・・・あ。結構遅刻ギリギリになりそうな時間。

 朝食を急いで済まし、準備をする。



 学校へ向かう途中、ひかりからメッセージが届く。


『遅刻かー? それともサボりかー?』


 サボりじゃないわ。


「寝坊して今向かってる」


 ひかりは結構適当そうに見えるが、遅刻したりサボったりはしない。

 なんでそういうところはしっかりしてるのか、未だに謎である。


『さくら選手は遅刻せず、到着することができるのでしょうか!』


 すぐに返信があった。そして急に実況が始まる。


『ひかり選手はさくら選手に圧倒的な差をつけて、既にゴールインしています!』


 勝手に勝負してることになってる。

 返事を返すと本当に遅刻しそうなので、連絡を無視して学校へ急いだ。



「ま、間に合った・・・」


 チャイム5分前に学校へ到着。

 朝からバタバタとなってしまった。


「おー。さくら選手が今ゴールイン」


 教室に入るとひかりが手を叩きながら声を掛けてきた。


「では、さくら選手にインタビューをしたいと思います」


 いつまで続けるのそれ・・・。

 めんどくさいなぁと思っていると、タイミング良くチャイムが鳴ったので自分の席に着く。ありがとうチャイム。



 授業中に夢の中?の出来事を思い出して整理する。

 案内人のくぼちゃんは、私の未来を案内しに来たらしい。

 テストとかの内容を教えてくれる訳ではなく、どうやら自分の周りに起こる出来事を案内するという感じ。もうこの時点でよく分からない。


 えーっと? まずはうさぎ先輩と仲良くしろだっけ?

 もしかしてうさぎ先輩がグイグイくるのと関係してるのかな?

 でも、うさぎ先輩は絶対くぼちゃんのこと知らないよね・・・。

 なのになんでくぼちゃんはうさぎ先輩のこと知ってるんだ・・・。

 まぁ、仲良くなるぐらいはすぐにできそう。

 問題なのは、そのうさぎ先輩から『恋』について勉強しろってことなんだけど・・・。


 どういうことなんだ?


 うさぎ先輩が百戦錬磨の恋愛マスターだから、聞けばなんでも教えてくれるとか?

 別に教わりたいことないんだけど。その場合はどうすればいいんだろ? 教えてくぼえもーん。

 とりあえずソフトテニス部に入部することになったし、うさぎ先輩とは自然と仲良くなるだろう。連絡先も知ってるしね。

 ・・・あんまりぐいぐい来られても困るけど。


 次に桜木先生だ。

 どうして桜木先生のことまで知ってるんだ?

 は・・・! まさか桜木先生の子供!?

 ・・・いやいや、先生は結婚してなかった。

 そうなると、単純にくぼちゃんと桜木先生は面識があるってことなのかな?

 今度それとなく聞いてみるかな。

 金髪で青い瞳の女の子の知り合いがいたりしますかと。


 ・・・いない気しかしない。


 ここが日本ではない海外なら可能性はあるけど日本だしなぁ。黒髪で黒い瞳が普通なんだよなぁ。

 そう考えると、ますますくぼちゃんの存在が、謎の存在となってくる。


 一体何者なんだくぼちゃん。

 考えをまとめる。


 ・くぼちゃんは未来を案内する案内人

 ・昨日の夢らしきものは夢じゃないらしい

 ・くぼちゃんは私と会ったことがある

 ・年齢不明

 ・うさぎ先輩と桜木先生のことを知っている

 ・うさぎ先輩と仲良くなるよう言われる

 ・恋についてお勉強

 ・くぼちゃんはまた現れるっぽい


 ・・・なるほど分からない。

 またくぼちゃんに会えば何か分かるかもしれない。いつ現れるのか不明だけど。

 それまでに聞きたいことをまとめておこう。

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