第5話 佐藤美桜の気持ち

「さくらちゃんか」


 ベッドにゴロゴロしながら呟く。

 部活動紹介の時になぜか視界に入る1年生がいた。

 それがさくらちゃんだった。


 部活動紹介の最中、私はさくらちゃんばかり見ていた。

 ハッキリとは分からないけど、なにか惹かれるものがあったのかもしれない。

 可愛いとは思うけど、目を見張るほど可愛いというわけではなく、ごく普通の女の子だ。

 本人は私が見ていたことに気づいてないはず。

 仮入部の時に私の事見てましたよね? とか言われてないし、多分大丈夫・・・だよね?

 というか、そんなこと言われたらどう言い訳をすればいいのか思いつかない。


 そんなさくらちゃんが、ソフトテニス部に入部してくれることになった。

 仮入部に来てくれた時はびっくりした。

 まさか来ると思ってなかったし。

 さらに、名前が私と同じ『桜』という文字が入っている。

 と言っても、さくらちゃんは平仮名で名前を書くみたいなので、正式には違うと思うけど勝手に同じと判断する。


 そんなこともあり、もはやこれは運命なのでは? なんてことを思い始める。単純だな私って。


 今日の出来事を思い出す。


 嬉しくて、気持ちが高まり過ぎてたせいか、今日は失敗したなぁとちょっと反省。

 その失敗というのは、何も言わずに脚を触ったことだ。

 こんなの普通に考えたらただの変態だ。

 危うく、変な目で見られそうだったしヒヤヒヤした。


 さくらちゃんの脚は柔らかくて、スベスベしてて、頬擦りしたくなるような脚だった。

 いや、頬擦りはしてないよ? ちゃんと我慢したし。

 こんなことを考えてる時点で、反省などしていないことが自分でもよく分かる。

 でも、今後は許可とれば、触っていいって言ってくれたからね! いっぱい触らせてもらお!


 ・・・。


「触るの好きなんですか?」


 さくらちゃんにそう言われた。

 なんか触りたくなっただけで、別に触るの好きとかじゃない・・・と思う。

 さくらちゃん以外の人にそんな気持ちならないし。


 でも、少しは気持ちを抑えないと。

 じゃないと、距離を置かれてしまうかもしれない。


 ふと、自分が1年生だった頃のことを思い出す。

 ・・・・・・いや、今は思い出すのはやめておこう。

 あの人みたいにはなりたくないし、あんな思いは二度としたくない。

 ちゃんと相手の気持ちも考えるようにしよう。


 はぁ・・・。早くさくらちゃんと仲良くなりたいなぁ。

 部活だけの関係ではなく、休日にどこかへ出掛けたり、楽しい思い出を作りたい。


「すぐに仲良くなれますよ」


 そんなことを考えてると、どこからかそう聞こえた。

 自分の部屋を見渡してみるが、もちろん誰もいない。

 外から聞こえたのかなと思い、窓を開けて下を覗いてみる。

 そこには仕事帰りと思われるサラリーマンと、明るい髪の色をした女の子が歩いてるだけだった。

 勘違いかなと窓を閉め、またベッドに横になる。


 ・・・早く会いたいなぁ。

 枕をギュッと抱きしめ、そっと目を閉じた。

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