第8話 十二月病
あれから季節がまた一つ過ぎ、十二月に入った。
「……そういえば、結局、十二月病って何だったんだ?」
遺書にも書かれていなかった。
彼女は一体どういう意志であのタイトルを名付けたのだろう……。
「遺書に何か書かれていないのか?」
勉強の合間に、俺は彼女の遺書を開いた。
どこかにヒントがないかと探していると、スマホの着信が鳴った。
「誰からだ?」
どうせメルマガとかだろうと思ったが、画面を見ると、あり得ない人からメールが来ていた。
「……え……。」
差出人 佐伯 文音、確かにそう書かれていた。
「いたずらか……?」
しかし、万が一ということもあるので、メールを見ることにした。
『こんにちは……こんばんはですかね。
お久しぶりです。文音です。遺書を書き終えた後にこのメールを書いています。
十二月病の意味を書き忘れてしまったので……。
理由は大きく分けて二つあります。
一つ目は、私の病気が十二月に発覚したからです。
なので、毎年十二月に面白い小説を飾っとって下さいね。
そして、二つ目は、私を思い出してほしいからです。
私が最初に渡した本に挟まっていた栞の押し花、あれはセンニチコウという花で、花言葉は、変わらぬ愛情。
私はずっと、あなたを愛していますよ。』
ずるいな、佐伯さんは……。
最期の最後で俺にとんでもない病気をうつして行ったな。
「はは......やっぱり、敵わないな......。」
『人生は小説より奇なり。』
俺はこの言葉を信用している。彼女がここまで俺に残してくれたものがそれを確信づけている。
「さて、小説でも書こうかな。」
俺は今、小説を書いている。
彼女の影響か、俺の夢はいつの間にか小説家になっていた。
「なぁ佐伯さん、俺、小説家になりたいんだよね。」
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