第52話「テストプレイ用サーバ解放事件」
それはその日、いつもの東京リージョンにログインしたときに起きた。
「お兄ちゃん、なんか画質が荒くないですか?」
それは俺も感じていたことだ、そして画質が荒いと言うより……
「全体的に角ばってんなあ……」
「昔こういうゲームがあったと聞きますがそれのオマージュでしょうか?」
俺もフォーレも足が四角い棒になっており体は四角い箱、両脇から手にあたる四角い棒が伸びており、箱状の体の上に立方体の頭が乗っている。
「バグだろ。この運営ならいつものことだろ?」
「それはそうですけど、変なバグですねえ、あらゆるものが角ばってますよ?」
机の上に置いてあったコップさえも角ばっている。それを手に取ろうとしてみるとキューブ状の手のひらにくっついた。
「者は持てるみたいだな……」
「お兄ちゃん……ここに真実が書かれていますよ」
フォーレがげんなりした顔で壁に貼られている紙を手のひらで指すのでそれを読んでみた。
「新要素実験サーバ、バグ報告は『090-xxxx-xxxx』まで」
「開発サーバにとばされたみたいですね……でもなんででしょう?」
「お前、時間を無駄に出来ないからってメンテ明けぴったりにログインしたよな? 俺もそれに合わせてログインしてきたんだが……多分開発用サーバとの切り替えが終わってなかったんだろうな……お粗末な話だとは思うが」
「お兄ちゃん! 私のレベルがMAXになってますよ!」
「テストプレイをするのに一々レベリングなんて出来ないからな、ステータスあげてテストしてるんだろう」
俺のステータスウインドウも開いてみたが軒並みカンストした値が並んでいた。こんなステータスでテストプレイをするから、ゲームバランスへの批判が起きるんだぞ。
「これは詫び石案件ですかね? もらえますかね石?」
「どうだろうな……もらえてもガチャ一回分くらいじゃないか?」
「うーん……渋い」
そんなことを話していると運営から天の声が降ってきた。
「皆様、申し訳ありません。意図せずテストサーバが公開されてしまいました。現在ログイン中の皆様はログアウトをお願いします。十分後、サーバの切断を行います」
「どうやらこの世界もここまでみたいだな。先にログアウトするよ」
「もう少し楽しみたかったですねえ……」
「はいはい、じゃあまた本番サーバが稼働したら入るからな」
「早くして欲しいですねえ……」
俺たちのログアウト後十分でログインサーバから本番サーバへ接続されいつも通りのゲームを遊べた。後日詫び石をもらったのは謂うまでもないとして、その前にギルメンの皆に『テストサーバってどんなのだった?』と質問攻めにされたのには閉口せざるをえなかった。
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